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番外編
新婚旅行(24)
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結局その日は本当にヴァレリオは姿を見せなかった。
クラリーチェも殆ど自力で動くことは出来なかった為、予定が変更になった事は有り難かった。
「少し、庭園を散歩しないか?」
漸くアルベルタ王妃のお茶会から解放された後、エドアルドはふと足を止めた。
「勝手に出歩いて、大丈夫なのですか?」
「滞在中、城内は自由に歩き回って構わないと伯父上から許可を得ている。………それにこの城はある意味別宅みたいなものだからな」
さっきまでアルベルタとドロエット公爵夫人の前で小さくなっていたのが嘘のように、エドアルドがいつもどおりの不敵な笑みを浮かべた。
「………では、是非お願い致します」
エドアルドはクラリーチェを抱き上げたまま、今朝方リベラートがジゼルにしたように、額にそっと口付けをした。
オズヴァルド城の庭園は、キエザのものとはまた趣の異なるものだった。
大きな噴水を中心に、自然のままの草木を手入れしたような素朴さがありつつも洗練された庭園に、クラリーチェは感嘆の溜息を零す。
「貴女はきっと、こういった場所を好むと思ったのだが…………」
エドアルドが少し照れくさそうな微笑みを浮かべる。
エドアルドが自分を喜ばせようと心を砕いてくれることに、クラリーチェは胸が温かくなった。
「とても素敵です」
黄昏れの空の下、澄み渡った優しい風がクラリーチェの美しい銀髪を掬い上げた。
庭園に差し込む陽射しは、橙黄色の光の筋になり、幻想的な風景を作り出していた。
その庭園の片隅に、大理石で作られたと思われる古い柱と、崩れかけた彫刻が置かれているのが目に入った。
「あれは………遺跡、ですか?」
「ああ。はるか昔にこの地を支配していた帝国の宮殿の跡に築かれた城だからな。そこかしこにああいった遺跡が残っているんだ。幼い頃はここでよく、リベラート達と隠れんぼをしたり、探検したりして遊んだな………」
懐かしそうに水色の瞳を細めるエドアルドを、クラリーチェは見上げた。
「エドアルド様にとって………オズヴァルドはかけがえのない、故郷のような場所なのですね」
ぽつりと落とされた言葉に、エドアルドははっとした表情を浮かべ、そして穏やかな笑顔を浮かべた。
「そうかもしれない。………私にとって、キエザは背負うべきものであり、王冠そのもの。だが、オズヴァルドは無邪気だった子供の頃の記憶が強いせいか、自然体になれるのかもしれない」
エドアルドはクラリーチェから視線を外すと、風で飛ばされた噴水の水飛沫が、焼ける様な夕陽に照らされて琥珀色に煌めくのを、眩しそうに見つめる。
「…………エドアルド様と一緒に、オズヴァルドに来ることが出来た事を嬉しく思います。エドアルド様の大切な物を、私も好きになりたいですから………」
クラリーチェははにかみながら微笑むと、エドアルド同様に噴水の水を眺めるのだった。
クラリーチェも殆ど自力で動くことは出来なかった為、予定が変更になった事は有り難かった。
「少し、庭園を散歩しないか?」
漸くアルベルタ王妃のお茶会から解放された後、エドアルドはふと足を止めた。
「勝手に出歩いて、大丈夫なのですか?」
「滞在中、城内は自由に歩き回って構わないと伯父上から許可を得ている。………それにこの城はある意味別宅みたいなものだからな」
さっきまでアルベルタとドロエット公爵夫人の前で小さくなっていたのが嘘のように、エドアルドがいつもどおりの不敵な笑みを浮かべた。
「………では、是非お願い致します」
エドアルドはクラリーチェを抱き上げたまま、今朝方リベラートがジゼルにしたように、額にそっと口付けをした。
オズヴァルド城の庭園は、キエザのものとはまた趣の異なるものだった。
大きな噴水を中心に、自然のままの草木を手入れしたような素朴さがありつつも洗練された庭園に、クラリーチェは感嘆の溜息を零す。
「貴女はきっと、こういった場所を好むと思ったのだが…………」
エドアルドが少し照れくさそうな微笑みを浮かべる。
エドアルドが自分を喜ばせようと心を砕いてくれることに、クラリーチェは胸が温かくなった。
「とても素敵です」
黄昏れの空の下、澄み渡った優しい風がクラリーチェの美しい銀髪を掬い上げた。
庭園に差し込む陽射しは、橙黄色の光の筋になり、幻想的な風景を作り出していた。
その庭園の片隅に、大理石で作られたと思われる古い柱と、崩れかけた彫刻が置かれているのが目に入った。
「あれは………遺跡、ですか?」
「ああ。はるか昔にこの地を支配していた帝国の宮殿の跡に築かれた城だからな。そこかしこにああいった遺跡が残っているんだ。幼い頃はここでよく、リベラート達と隠れんぼをしたり、探検したりして遊んだな………」
懐かしそうに水色の瞳を細めるエドアルドを、クラリーチェは見上げた。
「エドアルド様にとって………オズヴァルドはかけがえのない、故郷のような場所なのですね」
ぽつりと落とされた言葉に、エドアルドははっとした表情を浮かべ、そして穏やかな笑顔を浮かべた。
「そうかもしれない。………私にとって、キエザは背負うべきものであり、王冠そのもの。だが、オズヴァルドは無邪気だった子供の頃の記憶が強いせいか、自然体になれるのかもしれない」
エドアルドはクラリーチェから視線を外すと、風で飛ばされた噴水の水飛沫が、焼ける様な夕陽に照らされて琥珀色に煌めくのを、眩しそうに見つめる。
「…………エドアルド様と一緒に、オズヴァルドに来ることが出来た事を嬉しく思います。エドアルド様の大切な物を、私も好きになりたいですから………」
クラリーチェははにかみながら微笑むと、エドアルド同様に噴水の水を眺めるのだった。
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