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番外編
新婚旅行(19)
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「………チェ?クラリーチェ?」
名を呼ばれて、クラリーチェは気怠そうに顔を顰めながらゆっくりと瞼を持ち上げた。
「クラリーチェ?気がついたか?」
ぼんやりとする視界に、真っ先に飛び込んできたのは、愛しい夫の顔だった。
「エドアルド、様…………?おはようございます」
心なしか、声が掠れた。
何故か心配そうに、まるで壊れ物を扱うかのようにエドアルドはクラリーチェの頬に手を添えて、親指の腹で確かめるように撫でた。
「その、気分はどうだ…………?身体の、具合は………?」
バツが悪そうに、視線を彷徨わせているエドアルドを不思議に思いながらも、クラリーチェは起き上がろうとした。
「特には…………、っ痛ぅ…………」
何もないと言おうとして、腰のあたりに鈍く重い痛みを感じ、思わず顔を顰めた。
「クラリーチェ!」
その様子に、エドアルドは慌ててクラリーチェを抱き起こすと、背中の部分にクッションを詰め込む。
「大丈夫ですが、お水を…………」
喉が張り付いたようになっていて、上手く声が出ない。口の中を潤すものが欲しくて水を強請ると、サイドテーブルに置かれた水差しからグラスに水を注ぎ、エドアルドは自らそれを口に含み、クラリーチェへと口付ける。
何が起きたのか、クラリーチェは混乱しながらも腔内に流れ込む液体を嚥下する。
「そこまでしていただかなくても、自分で飲めますわ」
「昨夜は貴女に随分と無理をさせてしまったのだから、これくらいさせてくれ」
どこか苦しそうな表情のエドアルドの言葉に、クラリーチェはきょとんとする。
「昨夜…………?」
まだぼんやりとした頭で、記憶の糸を辿ってゆく。
晩餐の後、部屋に戻った所までははっきりと覚えている。
そして、晩餐の最中に何だかふわふわと気持ちよくなってきたのも覚えている。
「ええと…………?」
部屋に戻って、それからエドアルドに抱き締められて。
朧気な記憶が頭の中に蘇ってきて、それと同時にクラリーチェの顔がみるみる真っ赤に染まっていく。
「あの、私………っ」
どんな顔をして良いのかわからず、クラリーチェは両手で顔を覆った。
全てを鮮明に覚えている訳ではないけれど、とんでもないことを口にしたような気がする。
「さ………昨夜の事は………!」
「…………酒に酔ったせいなのは分かっている。そんな貴女を相手に………その、悪い事をしたと思っているのだが………」
エドアルドも恥ずかしそうに、そっぽ向く。
「随分と酩酊していたようだったから、てっきり何も覚えていないのかと思ったが………案外そうでもないのだな」
「……………っ」
いっそ、全てを忘れてしまっていたのなら、どんなに良かっただろうか。
限界を超えた羞恥で、ふるふると震えるクラリーチェに、エドアルドは微笑みかけると、そっと口付けを落としたのだった。
名を呼ばれて、クラリーチェは気怠そうに顔を顰めながらゆっくりと瞼を持ち上げた。
「クラリーチェ?気がついたか?」
ぼんやりとする視界に、真っ先に飛び込んできたのは、愛しい夫の顔だった。
「エドアルド、様…………?おはようございます」
心なしか、声が掠れた。
何故か心配そうに、まるで壊れ物を扱うかのようにエドアルドはクラリーチェの頬に手を添えて、親指の腹で確かめるように撫でた。
「その、気分はどうだ…………?身体の、具合は………?」
バツが悪そうに、視線を彷徨わせているエドアルドを不思議に思いながらも、クラリーチェは起き上がろうとした。
「特には…………、っ痛ぅ…………」
何もないと言おうとして、腰のあたりに鈍く重い痛みを感じ、思わず顔を顰めた。
「クラリーチェ!」
その様子に、エドアルドは慌ててクラリーチェを抱き起こすと、背中の部分にクッションを詰め込む。
「大丈夫ですが、お水を…………」
喉が張り付いたようになっていて、上手く声が出ない。口の中を潤すものが欲しくて水を強請ると、サイドテーブルに置かれた水差しからグラスに水を注ぎ、エドアルドは自らそれを口に含み、クラリーチェへと口付ける。
何が起きたのか、クラリーチェは混乱しながらも腔内に流れ込む液体を嚥下する。
「そこまでしていただかなくても、自分で飲めますわ」
「昨夜は貴女に随分と無理をさせてしまったのだから、これくらいさせてくれ」
どこか苦しそうな表情のエドアルドの言葉に、クラリーチェはきょとんとする。
「昨夜…………?」
まだぼんやりとした頭で、記憶の糸を辿ってゆく。
晩餐の後、部屋に戻った所までははっきりと覚えている。
そして、晩餐の最中に何だかふわふわと気持ちよくなってきたのも覚えている。
「ええと…………?」
部屋に戻って、それからエドアルドに抱き締められて。
朧気な記憶が頭の中に蘇ってきて、それと同時にクラリーチェの顔がみるみる真っ赤に染まっていく。
「あの、私………っ」
どんな顔をして良いのかわからず、クラリーチェは両手で顔を覆った。
全てを鮮明に覚えている訳ではないけれど、とんでもないことを口にしたような気がする。
「さ………昨夜の事は………!」
「…………酒に酔ったせいなのは分かっている。そんな貴女を相手に………その、悪い事をしたと思っているのだが………」
エドアルドも恥ずかしそうに、そっぽ向く。
「随分と酩酊していたようだったから、てっきり何も覚えていないのかと思ったが………案外そうでもないのだな」
「……………っ」
いっそ、全てを忘れてしまっていたのなら、どんなに良かっただろうか。
限界を超えた羞恥で、ふるふると震えるクラリーチェに、エドアルドは微笑みかけると、そっと口付けを落としたのだった。
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