冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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番外編

新婚旅行(14)

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「………クラリーチェ?」

用意された部屋に戻ると、エドアルドはやけにクラリーチェの顔が紅い事に気がついた。
いや、それだけではない。
薄い紫色の瞳はとろんとしていて、ドレスの隙間から覗く白い胸元や首筋もほんのりと薄桃色に色付いているように見えた。

「ふぁ………?」

上目遣いで、クラリーチェがエドアルドを見つめてくるが、焦点が合っていない。

やはり、クラリーチェの様子がおかしい。

「クラリーチェ、まさか………熱でも………っ?!」

夕暮れ時の運河水辺で風に当たったせいだろうか。それとも、慣れない環境で疲れが出たせいだろうか。………それとも、まさか。
エドアルドは焦りながら必死に考えを巡らせる。

「陛下、落ち着いて下さい」

クラリーチェの体を抱え上げたエドアルドを、冷静な声で窘めたのはリディアだった。

「クラリーチェ様は体調を崩されたわけではありませんわ」
「では、毒か………っ?」
「ここはオズヴァルドの王城ですよ?普通に考えて、そんな真似をする人間がこの場所にいるとお思いですか?」

この状況でも、全く動じないリディアは流石だとエドアルドは思った。

「では、まさか………?」
「それも違います。ご懐妊であれば、まずこんなにもお顔が紅くなることはございません」
「では、一体何なのだ?」

苛立ったようにエドアルドがリディアへと問うと、リディアはにこりと微笑んだ。

「クラリーチェ様は、お酒を召し上がったようですね。おそらくは、オズヴァルド国王陛下の仕業でしょう。………そう強いものでないところを見ると、クラリーチェ様がお酒に弱いことを知った上で、敢えて飲ませたようですね………」
「わたし、おさけはのんでいない、わ?」

リディアの説明に加えて、少し潤んだ、薄い紫色が艶っぽく揺れて、いつもは静かだがはっきりとした発音で言葉を紡ぐクラリーチェの、呂律の回らない様子に、エドアルドは全てを悟った。

「伯父上………っ!」
「えどあるど、さま?どうして、おこっているの………?」

ふわりと微笑みながら、小首を傾げる仕草に、エドアルドは思わず息を呑む。
おそらくヴァレリオ伯父は、ラファエロ辺りからクラリーチェの酔いが回った状態のことを聞いていて、使ってきたのだろう。

「………エドアルドさま、だいすき」

以前にクラリーチェの飲み物にお酒を数滴混ぜられた事はあったが、今宵はその何倍もの我慢をしながらのそんな彼女をぎゅっと抱きしめるのだった。
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