冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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番外編

新婚旅行(13)

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「王都のは、有意義に過ごせたそうだな、エドアルド?」
「ええ。これも全て伯父上と伯母上のお陰ですよ」

帰城後の晩餐の席では今日の視察についての話で盛り上がった。

「公務さえなければ皆でスカーレット歌劇場で『氷の姫君』を鑑賞出来たというのに、本当に残念だったわ………」
「次の機会があれば是非ともご一緒したいですわね」
「そういえば、護衛の者から聞きましたけれど………こっそりと城を抜け出して、一人だけ楽しい思いをした不届き者がいたそうですわね?」

王太子妃ジゼルの不穏な笑みに、リベラートの顔色が一気に青ざめていく。
「」
「あ………、いやその………その通りなんだが………。ええと………じ、ジゼルさん………?」

何故か萎縮しながら、ジゼルに引きつった笑顔を向けるリベラートを眺めながら、エドアルドとクラリーチェは飲み物を口にする。
ジゼルはリベラートよりも三つ年下だった筈だが、夫婦間の力関係はこうして見ると明白だった。

「そんなに楽しい計画、どうして私も混ぜてくださらなかったのですか?」

穏やかな笑みを湛えたジゼルがリベラートを見つめると、リベラートは視線を泳がせた。

「はっはっは!まぁリベラートをそう責めないでやってくれ。………リベラートはエドアルドを弟達と同様に思っているから、勘弁してやってくれ」

ヴァレリオが、愉快そうに止めに入るのを見たエドアルドは、今日の一件の黒幕が伯父であり、のリベラートはそれに従ってのだと悟った。

「そう言えば、お二人共素敵な指輪をされていますけれど、そちらは…………?」

王太子夫妻の夫婦喧嘩を横目で見ながら、今度は王妃アデリーナが指輪の話題を振ってきた。

「あぁ………こちらはガレリオを視察した際に、たまたま目に入りまして………。他国では、配偶者に指輪を送り合う結婚指輪なるものがあると聞いたのを思い出しましてね」
「あら………、よく見ればお互いの瞳の色の石が嵌め込まれているのね。素敵だわ。………全く、エドアルドがこんなにもロマンチックな行いが出来るようになるだなんて………」
「全くだ。幼い頃から、女性が身辺に近づく事を極端に嫌っていたからな。………同じ年くらいの令嬢を追い払った事もあったなあ………」
「余計な話はお控えくださいね、伯父上」

殺伐とした空気と、和やかな空気が入り交じる不思議な晩餐の席は大いに盛り上がった。
そのせいか、クラリーチェの異変にエドアルドが気がついたのは、部屋に戻った後のことだった。
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