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番外編
新婚旅行(11)
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そのまま一通りガレリアの店を見て歩き、そこを抜けた先にある運河まで足を運ぶと、周りの景色は一変する。
「………何だか、水路を見ると安心する気がしますわ」
クラリーチェがはにかみながらそう告げると、エドアルドも頷く。
「キエザは、海と共に発展した国だからな。それだけ水との関わりが深い」
海との結婚の儀式に代表されるように、海がキエザという国を支えていると言っても過言ではない事を、エドアルドもクラリーチェも、よく理解している。
だからこそ、水に親しみを感じるのだった。
「それにしても、海との結婚のクライマックスでのお前のプロポーズは、本当に見ものだったよ」
エドアルドの言葉を聞いて、思い出したようにリベラートが呟いた。
「なっ…………」
「いや、別に冷やかすつもりはない。ただ、幼い頃からのお前を知っている身としては、感慨深いものがあったんだよ」
いつもの揶揄うような表情ではなく、本当にエドアルドの行動に敬意を払うような表情を浮かべて、リベラートはエドアルドを見つめた。
それからにやりと嗤うと、エドアルドの耳元で、こそっと何かを呟いたかと思うと途端にエドアルドが驚いたように目を瞠り、それから頬を朱く染めた。
「………じゃあ、そろそろ邪魔者は退散するとするよ。新婚のお二人さん、夜はこれからなのだから、目一杯楽しむんだぞ?」
ひらひらと手を振りながらリベラートが立ち去ると、ゆっくりと広がっていく宵闇の中で運河にかかる橋が、明かり取りの松明に照らしだされて、幻想的に浮かび上がる。
「まぁっ…………!」
クラリーチェが感嘆の声を漏らすと、エドアルドはそんなクラリーチェを眺めながら、目を細めた。
「………結局、リベラートは全てお見通しなのが、気に入らないがな」
悔しそうに顔を歪めながらも、不思議なくらいに嬉しそうなエドアルドを見て、クラリーチェは思わず微笑んだ。
「それも含めて、本当に素敵な一日を過ごすことができましたもの」
クラリーチェは淡い紫色の双眸を、真っ直ぐエドアルドに向けた。
「………それは、確かにそのとおりだな。リベラートは貴女が好む………けれどもただの観光スポットではなく、歴史と文化の融合した、まちづくりを我々に見せようとしたのだろうな」
しみじみとエドアルドは微笑むと、徐にクラリーチェの左手を自分の掌に乗せた。
「それは…………?」
いつの間にか、エドアルドの手には美しい細工の、アクアマリンを埋め込んだ指輪が収まっていた。
「別の大陸では、結婚指輪というものを送るらしい。結婚していることがひと目で分かるのだそうだ」
そう言うと、エドアルドは嬉しそうにその指輪をクラリーチェの左手の薬指に嵌める。
「………これで、誰の目からも貴女が私のものだということが分かる」
石の部分に口付けを落とすと、エドアルドは、妖艶な微笑みを浮かべるのだった。
「………何だか、水路を見ると安心する気がしますわ」
クラリーチェがはにかみながらそう告げると、エドアルドも頷く。
「キエザは、海と共に発展した国だからな。それだけ水との関わりが深い」
海との結婚の儀式に代表されるように、海がキエザという国を支えていると言っても過言ではない事を、エドアルドもクラリーチェも、よく理解している。
だからこそ、水に親しみを感じるのだった。
「それにしても、海との結婚のクライマックスでのお前のプロポーズは、本当に見ものだったよ」
エドアルドの言葉を聞いて、思い出したようにリベラートが呟いた。
「なっ…………」
「いや、別に冷やかすつもりはない。ただ、幼い頃からのお前を知っている身としては、感慨深いものがあったんだよ」
いつもの揶揄うような表情ではなく、本当にエドアルドの行動に敬意を払うような表情を浮かべて、リベラートはエドアルドを見つめた。
それからにやりと嗤うと、エドアルドの耳元で、こそっと何かを呟いたかと思うと途端にエドアルドが驚いたように目を瞠り、それから頬を朱く染めた。
「………じゃあ、そろそろ邪魔者は退散するとするよ。新婚のお二人さん、夜はこれからなのだから、目一杯楽しむんだぞ?」
ひらひらと手を振りながらリベラートが立ち去ると、ゆっくりと広がっていく宵闇の中で運河にかかる橋が、明かり取りの松明に照らしだされて、幻想的に浮かび上がる。
「まぁっ…………!」
クラリーチェが感嘆の声を漏らすと、エドアルドはそんなクラリーチェを眺めながら、目を細めた。
「………結局、リベラートは全てお見通しなのが、気に入らないがな」
悔しそうに顔を歪めながらも、不思議なくらいに嬉しそうなエドアルドを見て、クラリーチェは思わず微笑んだ。
「それも含めて、本当に素敵な一日を過ごすことができましたもの」
クラリーチェは淡い紫色の双眸を、真っ直ぐエドアルドに向けた。
「………それは、確かにそのとおりだな。リベラートは貴女が好む………けれどもただの観光スポットではなく、歴史と文化の融合した、まちづくりを我々に見せようとしたのだろうな」
しみじみとエドアルドは微笑むと、徐にクラリーチェの左手を自分の掌に乗せた。
「それは…………?」
いつの間にか、エドアルドの手には美しい細工の、アクアマリンを埋め込んだ指輪が収まっていた。
「別の大陸では、結婚指輪というものを送るらしい。結婚していることがひと目で分かるのだそうだ」
そう言うと、エドアルドは嬉しそうにその指輪をクラリーチェの左手の薬指に嵌める。
「………これで、誰の目からも貴女が私のものだということが分かる」
石の部分に口付けを落とすと、エドアルドは、妖艶な微笑みを浮かべるのだった。
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