冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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番外編

新婚旅行(10)

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リベラートがエドアルドとクラリーチェを案内してくれた場所は、ガレリアと呼ばれる大規模なショッピングアーケードだった。

「見事な造りのものですね」
「ええ。ここは初代国王が商人たちの保護を目的として造らせた場所です」

中心地から、十字形に広がるアーケード街のような作りは、それだけで一つの街のようだった。
クラリーチェは驚いたようには辺りを見回している。

「国の経済の基盤は、やはり商人の腕にかかっていると言っても過言ではありませんものね。それにいち早く目をつけて保護しようとしたかはもう敬意しかございませんわ」
「………本当に、改めて感じるけれど………流石はエドアルドが選んだ女性だな」

洋服や宝飾品、お洒落なカフェには見向きもせずに、目を輝かせる。

「こうして似た業種の方々を一箇所に集めることでのメリットも大きいでしょうね」

思っていた「喜ぶ」と違って、エドアルドは少し困惑していた。
エドアルドの想定では、貴婦人が好みそうなお店か、古い書店だと思いこんでいたからだ。

「釈然としないな顔だな、エドアルド?」

楽しそうにウインドウショッピングを楽しむクラリーチェをよそに、リベラートが問いかけると、エドアルドはじっとクラリーチェを見つめながら、口を尖らせた。

「クラリーチェが喜ぶからと着いてきたのだぞ?」
「あれは喜んでいるうちに入らないのか?」

足元に敷かれた美しいモザイク画になったガレリオの様子に、クラリーチェはすっかり夢中になっていた。

「クラリーチェ妃。床ばかり見ていると、大切なものを見逃しますよ?………例えば、あちらにあるのはフレスコ画。あれは我が国と、関係諸国を表した絵なのです。ほら、きちんとキエザも描かれていますよ」

リベラートはそれぞれの道に描かれたモザイク画の意味や謂れ、そしてジンクスなどをクラリーチェに丁寧に説明していく。
リベラートの話に聞き入るクラリーチェの輝かんばかりの表情は、確かに心から楽しんでいるように見えた。

「それから、こちらのこの雄牛のモザイク画。ほら、ここの部分に窪みがあるでしょう?そこに靴の踵を引っ掛けて、目を瞑ったまま踵を離すことなくくるっと一周回ることが出来れば、幸せが訪れるという言い伝えがあるのですよ。………ロマンチックでしょう?」
「素敵なジンクスですわね!………あの、試してみてもいいのですか?」

リベラートがクラリーチェに紹介するものは、歴史的な価値のある、かつキエザにも有益な商法としてなりうるようなものばかりだった。

「………なるほどな」

それを見て、ようやくエドアルドはリベラートが何を考えてこの場所へと二人を連れてきたのかが分かった気がした。
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