冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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番外編

新婚旅行(3)

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オズヴァルド王国は、キエザ王国の北西方向に位置しており、巨大な港を有し、海との関わりの深いキエザとは異なり、高山の麓に広がる雄大な自然と産業の栄えた国だ。
特に服飾や冶金には定評があり、女性達を虜にするような高名なドレスデザイナーを多く排出していた。

キエザとの国境を超えると、深い森に大小様々な湖が点在する地域へと出た。

「エドアルド様…………!小さな海が沢山あります。もしかしてあれが、湖というものですか?」

クラリーチェの持つ知識は全て本から得たものだ。そのせいか実物を目にするとどうしても興奮してしまう。

「ああ。貴女が望むなら、湖をキエザ王宮の周りに造ってもいい。………そうだな…………。丁度かつて父の後宮があった場所が空いているからあの場所を潰して…………」
「だ、大丈夫ですわ。やはり湖は自然の中にあって、自然に出来ているから美しいのです。ですから、王宮の横に造って頂く必要はありません………!私は湖の実物が見れただけで満足なのです………!」

以前からエドアルドがクラリーチェにとことん甘いことは分かっていたが、ここ最近はそれがさらにエスカレートしている気がした。
迂闊にも『欲しい』だの『やってみたい』だのという言葉を口にしたら最後、エドアルドはそれをクラリーチェの為に実行しようと全力を注ぐからだ。

「………む………。そうなのか?」

心底残念そうにエドアルドが呟くと、クラリーチェは彼の腕の中で笑顔を取り繕いながら頷いた。



そんなやり取りを繰り返しながら、馬車に揺られること二日。
漸く王都に到着すると、その雰囲気の重厚感には圧倒されるものがあった。
特に目を引くのは、高く聳える王城と、その隣に寄り添うように建つ美しい大聖堂だった。

「サントクルーチェ大聖堂もとても素敵ですが…………あちらに見える大聖堂もやはり美しいですね。あれが、有名なサントスフォルツァ大聖堂ですか?」
「流石だな。その通りだ。あの大聖堂の内部には高名な画家が描いたという巨大な絵画が納められているのだ。………国王への挨拶を済ませたあとにでも、見に行ってみるか?」

確か、非常に歴史的価値の高い、貴重なものだと美術書や歴史書には記されていたのを思い出す。それに、その絵画だけではなく、大聖堂自体にもかなりの歴史的価値があるとのことだった。

「もし、時間が許すのなら、是非お願いしたいですわ」

エドアルドからの提案に、クラリーチェは嬉しそうに微笑んだ。
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