冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

文字の大きさ
上 下
158 / 268
番外編

新婚旅行(2)

しおりを挟む
「視察には近衛騎士のダンテとテオ、それから貴女の護衛としてリディアとアンナの二名を同行者として連れて行く。………行き先もオズヴァルドだし、基本的に危険はないとは思うがな。………ちなみに、貴女と私の馬車はこちらで、後ろからダンテ達の馬車がついてくるようにした」

そして迎えた出発の日の朝。
満面の笑みを浮かべたエドアルドはこざっぱりとした旅支度の服装に身を包んでいた。
エドアルドは王族用の重厚な服か軍服を身に着けている事が多いせいか、新鮮さが増して、クラリーチェの目にはより魅力的に見えた。

クラリーチェは生まれてこのかた、国外はおろか、王都からも出た事がなかったからだ。
結婚前に一度、ジャクウィント侯爵領を見に行こうとしたが、中々時間を取ることが出来ずに行けずじまいに終わったため、これが人生初の遠出となる。
そのせいもあり、クラリーチェはそわそわと落ち着かなかった。

「………いつもの馬車よりも、広いですか?」

エドアルドに支えられて馬車に乗り込むと、城下町へと出掛ける際に使用する馬車よりかなり頑丈で、室内も広く凝った造りであることに気がついた。

「ああ、長距離移動用だからな。出来る限り体に負担が掛からないように、城で普段使用している家具に出来るだけ近いものを再現しているんだ」

物珍しそうに室内を眺めるクラリーチェを、彼女の隣に腰を降ろしたエドアルドが、説明をしてくれる。

「そうなのですね………。でも、そんなに広い造りならば、エドアルド様は私の隣ではなくお向かいに座られれば良いと思うのですけれど…………?」

戸惑ったような笑みを浮かべながら、クラリーチェが小首を傾げるとエドアルドの頬が僅かに赤味を帯びた。

「いや。愛する貴女と、ずっと一緒にいられるというのに、顔だけ眺めているのも良いが………せっかく二人きりで過ごすことが出来る場所だというのに、どうして離れている必要がある?」
「え」
「片時も、離れたくないのだから、仕方あるまい」

そう告げたエドアルドが、クラリーチェの体を抱き締めると、途端にクラリーチェの顔が真っ赤に染まった。

「クラリーチェ様は今日も可愛らしいですわ」
「ふふ。あなたには敵いませんよ、リリアーナ」

今回は留守番となったラファエロとリリアーナがクラリーチェ達の馬車を眺めている。

「そろそろ、時間ですね。では兄上、義姉上、留守はしっかりと守りますので、思う存分楽しんできてくださいね」

ラファエロが爽やかな笑みを浮かべると、がたん、と馬車が揺れてゆっくりと動き出したのだった。
しおりを挟む
感想 641

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。