155 / 268
番外編
とある騎士の苦悩(2 SIDE:ダンテ他)
しおりを挟む
暫く様子を見ようと思ったダンテが、自分の考えが間違っていたということに気がついたのはそれから一ヶ月程が経ってからだった。
そもそも近衛騎士の任務は、王をはじめとした王族の身辺警護が主な仕事となる。
そのため昼夜を問わずに見回りをする必要があり、交代制で二十四時間王族のプライベートエリアで見張りをする必要がある。
だが、エドアルドによる早朝稽古が始まって以来、その交代制がゆらぎ始めた。
夜勤の者以外は基本的に朝三時に叩き起こされたかと思うと、問答無用で鍛錬場に連行され、みっちり五時間程度の鍛錬が始まる。
はじめの頃こそ、国王自らが稽古をつけてくれるとあって騎士達も喜々として参加していたが、その壮絶なメニューに段々と生気が抜けたようになり、最終的には、精根尽き果てた状態になっているのだった。
かろうじて食事を取り、休憩時間には短い睡眠を補う為に壁に寄りかかったまま眠る者まで現れる始末だった。
「………退団希望者が殺到しております。………いかが致しましょう?」
当然の結果といえば、そのとおりだ。
あまりのキツさに、退団希望者が殺到することとなったのだ。
困り果てたダンテは、エドアルドを止めることが出来る人物………ラファエロに泣きつくことにしたのだった。
「そうですか………。まあ当然と言えば当然の結果なのでしょうけれど…………」
ラファエロは苦笑いを浮かべる。
「もう少しの間で結構ですから、退団希望者の面々を、説得していただけませんか?」
無理難題とまではいかないにしても、ダンテ自身が神経を摩耗している状態で、ラファエロの言葉は死刑宣告のようにすら聞こえた。
「………俺に拒否権など、ありませんよね………」
深く深い溜息をついたダンテに、ラファエロはにこりと微笑みかける。
「とりあえず政敵は消滅しましたし、当面の間は他国と争うような不穏な動きもおりませんから、多少は警備が手薄になっても大丈夫です。それに、兄上の剣の腕は天下無双ですからね。いい勉強になるのではないですか?」
「あ、いや………まあ、そうですけれど………」
流石はエドアルドの懐刀と呼ばれる逸材だけあって、ダンテの懇願は呆気なくラファエロに言い包められて終わってしまっていた。
「この試練を乗り越えてこその、近衛騎士団です。私も一緒に鍛錬に付き合いますので、頑張りましょう」
「は………はい!」
しまった、と気がついたときには、遅かった。
ついうっかり、ラファエロの口車に載せられて返事をしてしまったということを、激しく後悔するのであった。
そもそも近衛騎士の任務は、王をはじめとした王族の身辺警護が主な仕事となる。
そのため昼夜を問わずに見回りをする必要があり、交代制で二十四時間王族のプライベートエリアで見張りをする必要がある。
だが、エドアルドによる早朝稽古が始まって以来、その交代制がゆらぎ始めた。
夜勤の者以外は基本的に朝三時に叩き起こされたかと思うと、問答無用で鍛錬場に連行され、みっちり五時間程度の鍛錬が始まる。
はじめの頃こそ、国王自らが稽古をつけてくれるとあって騎士達も喜々として参加していたが、その壮絶なメニューに段々と生気が抜けたようになり、最終的には、精根尽き果てた状態になっているのだった。
かろうじて食事を取り、休憩時間には短い睡眠を補う為に壁に寄りかかったまま眠る者まで現れる始末だった。
「………退団希望者が殺到しております。………いかが致しましょう?」
当然の結果といえば、そのとおりだ。
あまりのキツさに、退団希望者が殺到することとなったのだ。
困り果てたダンテは、エドアルドを止めることが出来る人物………ラファエロに泣きつくことにしたのだった。
「そうですか………。まあ当然と言えば当然の結果なのでしょうけれど…………」
ラファエロは苦笑いを浮かべる。
「もう少しの間で結構ですから、退団希望者の面々を、説得していただけませんか?」
無理難題とまではいかないにしても、ダンテ自身が神経を摩耗している状態で、ラファエロの言葉は死刑宣告のようにすら聞こえた。
「………俺に拒否権など、ありませんよね………」
深く深い溜息をついたダンテに、ラファエロはにこりと微笑みかける。
「とりあえず政敵は消滅しましたし、当面の間は他国と争うような不穏な動きもおりませんから、多少は警備が手薄になっても大丈夫です。それに、兄上の剣の腕は天下無双ですからね。いい勉強になるのではないですか?」
「あ、いや………まあ、そうですけれど………」
流石はエドアルドの懐刀と呼ばれる逸材だけあって、ダンテの懇願は呆気なくラファエロに言い包められて終わってしまっていた。
「この試練を乗り越えてこその、近衛騎士団です。私も一緒に鍛錬に付き合いますので、頑張りましょう」
「は………はい!」
しまった、と気がついたときには、遅かった。
ついうっかり、ラファエロの口車に載せられて返事をしてしまったということを、激しく後悔するのであった。
23
お気に入りに追加
7,129
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
この度、双子の妹が私になりすまして旦那様と初夜を済ませてしまったので、 私は妹として生きる事になりました
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
*レンタル配信されました。
レンタルだけの番外編ssもあるので、お読み頂けたら嬉しいです。
【伯爵令嬢のアンネリーゼは侯爵令息のオスカーと結婚をした。籍を入れたその夜、初夜を迎える筈だったが急激な睡魔に襲われて意識を手放してしまった。そして、朝目を覚ますと双子の妹であるアンナマリーが自分になり代わり旦那のオスカーと初夜を済ませてしまっていた。しかも両親は「見た目は同じなんだし、済ませてしまったなら仕方ないわ。アンネリーゼ、貴女は今日からアンナマリーとして過ごしなさい」と告げた。
そして妹として過ごす事になったアンネリーゼは妹の代わりに学院に通う事となり……更にそこで最悪な事態に見舞われて……?】

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ここは私の邸です。そろそろ出て行ってくれます?
藍川みいな
恋愛
「マリッサ、すまないが婚約は破棄させてもらう。俺は、運命の人を見つけたんだ!」
9年間婚約していた、デリオル様に婚約を破棄されました。運命の人とは、私の義妹のロクサーヌのようです。
そもそもデリオル様に好意を持っていないので、婚約破棄はかまいませんが、あなたには莫大な慰謝料を請求させていただきますし、借金の全額返済もしていただきます。それに、あなたが選んだロクサーヌは、令嬢ではありません。
幼い頃に両親を亡くした私は、8歳で侯爵になった。この国では、爵位を継いだ者には18歳まで後見人が必要で、ロクサーヌの父で私の叔父ドナルドが後見人として侯爵代理になった。
叔父は私を冷遇し、自分が侯爵のように振る舞って来ましたが、もうすぐ私は18歳。全てを返していただきます!
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。