冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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番外編

とある騎士の苦悩(1 SIDE:ダンテ他)

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近衛騎士。
それは国王直属の騎士団に属する騎士達を指す言葉。
国王と、第一王位継承者の命令のみで動くキエザ王国が誇る精鋭部隊。

騎士を志す者達だけでなく、全国民の憧れであり、騎士にとっては近衛騎士に選ばれるということは最高の栄誉。………のはずだった。

寝不足と疲労で、歩きながらでも眠れそうな程に身も心も困憊した様子の近衛騎士が、城内で頻繁に目撃されるようになったのは、ブラマーニ公爵家をはじめとした貴族達への血の粛清が行われた直後からだった。

「………死ぬっ…………」

どの騎士も口を開けば、それしか出てこない。
王の影という側面を持つコルシーニ伯爵家の次男であり、近衛騎士団長を任されているダンテは、部下たちの有様に頭を抱えていた。

「団長………目を閉じると、花畑の向こう側で死んだ婆ちゃんが手を振っているのが見えます………」
「………とりあえず、仮眠室へ行って来い。但し後が詰まっているから、三時間で戻れよ」
「聞いてください、団長………三週間家に帰れなかったら恋人が別の男と駆け落ちしてました………」
「………もう、それは悔やんでも仕方ない。その女性とは縁がなかったということだ。今度一杯奢ってやるから元気を出せ」

近衛騎士団の詰所は、混沌としていた。
生気を吸い取られたかのような騎士達が、今にも昇天しそうな表情で、ダンテの元を訪れる。
それもこれも、全ての原因はキエザ国王エドアルド・レアーレ・キエザにあった。

「………陛下………」

物心ついた頃から父から鍛えられてきてダンテでさえも、そろそろ我慢の限界だった。

「………明日から、近衛騎士達に早朝稽古をつけようと思う」
「…………は?」

突然エドアルドがそんなことを言い出したのは、ブラマーニ家のクズ達を拷問した翌日だった。
珍しく目の下にクマを作りながら、やけにやつれたエドアルドの様子は、明らかに異常だった。

「この欲求不満を上手く解消しなければ、どうにかなりそうだ………!ならば、鍛錬で我武者羅に体を動かそうと思ったのだ。どうせなら、近衛騎士達に稽古をつければ励みになるだろう」

確かに、王直々に稽古をつけてもらえれば、近衛騎士達は喜ぶだろう。
だが。

「何故、早朝なのですか?」
「それは勿論、クラリーチェに気が付かれないようにだ。クラリーチェに余計な心配を掛けたくないのだ」
「………やはり、そこですか………」

予想通りとはいえ、ダンテは溜息をつきたい気分になった。

「既に婚約者なのですから、手を出しても誰も何も言いませんよ?それに、痩せ我慢はよくありませんと、ラファエロ殿下も仰いませんでしたか?」

ダンテの言葉に、エドアルドは憮然とした表情を浮かべた。
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