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番外編
初夜(3) ※ちょっとR18です
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「エドアルド様、あの………」
呆然と立ち尽くしたままクラリーチェを凝視するエドアルドに、クラリーチェは何か不手際があったのかと不安になった。
「………っ」
不意に、空気が動く気配を感じた次の瞬間には、クラリーチェの体はエドアルドによって抱き上げられていた。
「…………ようやく、ようやく貴女に触れられる」
そのままベッドの縁まで移動すると、壊れ物を扱うかのようにゆっくりと、大切そうにクラリーチェの体を横たえる。
肌に触れたシーツがやけに冷たく感じたのは、己の体が火照っているせいなのだとクラリーチェは気が付いた。
ぎしり、とベッドが沈んだかと思うと、すぐ目の前にエドアルドの芸術的な顔が見えた。
「どれだけ、こうしたいと待ち望んだことか」
水色の瞳がうっとりとしたように細められると、クラリーチェは胸の奥が切なさに震えるのを感じた。
柔らかな唇が、額に、そして頬に触れ、唇に触れた。
「ん………っ」
バードキスを繰り返していたかと思うと、突然肉厚の舌が、唇の隙間を割って入ってきて、クラリーチェは思わず声を漏らした。
それを狙っていたかのように、舌を絡め取られ、歯列をなぞられて、更に深く口付けをされると、クラリーチェは頭の芯がぼうっとしてくるような気がした。
口付けだけならば、数え切れないほど交わしているのに、これは今までのものとは比べ物にならなかった。
「………っは……、あ………」
呼吸もままならず、喘ぐように息を漏らすと、漸く唇が解放されたと思ったのも束の間、今度は耳朶に、柔いものが触れた。
「ひあっ………」
そこは、ジュストがクラリーチェを捕らえたときに舐めた場所だった。
あの時は嫌悪感しか無かったはずなのに、エドアルドが同じ行為をすると、どうしてこんなにも体の奥が疼くような、感覚に囚われるのだろう。
「可愛らしい声を、もっと聞かせてくれ………」
エドアルドの声が熱っぽく掠れて、クラリーチェはぞくりと肌が粟立つのを感じた。
「エドアルド、さま…………」
悲しくなどないのに、視界が涙で滲む。
その間にエドアルドの唇は首筋へと移動していき、じゅっ、と音を立てて肌に吸い付く。
クラリーチェは快感に体をふるりと震わせた。
怖いのに、嬉しい。気持ちいいのに、もどかしい。
相反する気持ちと感覚に翻弄されながら、クラリーチェはエドアルドの体の下で身を捩る。
潤んだ淡い紫色の瞳が、欲情を宿した水色の瞳にぶつかるとエドアルドは嬉しそうに、微笑んだ。
呆然と立ち尽くしたままクラリーチェを凝視するエドアルドに、クラリーチェは何か不手際があったのかと不安になった。
「………っ」
不意に、空気が動く気配を感じた次の瞬間には、クラリーチェの体はエドアルドによって抱き上げられていた。
「…………ようやく、ようやく貴女に触れられる」
そのままベッドの縁まで移動すると、壊れ物を扱うかのようにゆっくりと、大切そうにクラリーチェの体を横たえる。
肌に触れたシーツがやけに冷たく感じたのは、己の体が火照っているせいなのだとクラリーチェは気が付いた。
ぎしり、とベッドが沈んだかと思うと、すぐ目の前にエドアルドの芸術的な顔が見えた。
「どれだけ、こうしたいと待ち望んだことか」
水色の瞳がうっとりとしたように細められると、クラリーチェは胸の奥が切なさに震えるのを感じた。
柔らかな唇が、額に、そして頬に触れ、唇に触れた。
「ん………っ」
バードキスを繰り返していたかと思うと、突然肉厚の舌が、唇の隙間を割って入ってきて、クラリーチェは思わず声を漏らした。
それを狙っていたかのように、舌を絡め取られ、歯列をなぞられて、更に深く口付けをされると、クラリーチェは頭の芯がぼうっとしてくるような気がした。
口付けだけならば、数え切れないほど交わしているのに、これは今までのものとは比べ物にならなかった。
「………っは……、あ………」
呼吸もままならず、喘ぐように息を漏らすと、漸く唇が解放されたと思ったのも束の間、今度は耳朶に、柔いものが触れた。
「ひあっ………」
そこは、ジュストがクラリーチェを捕らえたときに舐めた場所だった。
あの時は嫌悪感しか無かったはずなのに、エドアルドが同じ行為をすると、どうしてこんなにも体の奥が疼くような、感覚に囚われるのだろう。
「可愛らしい声を、もっと聞かせてくれ………」
エドアルドの声が熱っぽく掠れて、クラリーチェはぞくりと肌が粟立つのを感じた。
「エドアルド、さま…………」
悲しくなどないのに、視界が涙で滲む。
その間にエドアルドの唇は首筋へと移動していき、じゅっ、と音を立てて肌に吸い付く。
クラリーチェは快感に体をふるりと震わせた。
怖いのに、嬉しい。気持ちいいのに、もどかしい。
相反する気持ちと感覚に翻弄されながら、クラリーチェはエドアルドの体の下で身を捩る。
潤んだ淡い紫色の瞳が、欲情を宿した水色の瞳にぶつかるとエドアルドは嬉しそうに、微笑んだ。
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