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本編
205. 宴(2)
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クラリーチェのクローゼットに収められているエドアルドからの贈り物のドレスは全て水色か金色の、もしくはその両方の色彩のドレスだ。
流石のリベラートもそこまでは知らないはずだが、見透かされているような気がして、クラリーチェは俯いた。
「ははは。照れるレディ・クラリーチェも可愛らしいな」
途端にエドアルドがギロリと殺気を含んだ視線をリベラートに向ける。
「そういうところが、女好きだと言うんだ」
「………その価値観はどうかと思うぞ。お前今までよく問題を起こさずに王太子をやってきたな」
「………いえ、問題を起こしかけたことは何度もありますけれどね」
「そういえば婚約者候補の王女やご令嬢を、会うことすらせずに追い返したんだったな」
思い出したように呟き、リベラートはまた心底愉しそうに笑った。
「………本当に、レディ・クラリーチェと出会ってなければ一生独身だったんだろうな」
「お陰でこちらは大変な苦労を強いられましたけれどね」
一瞬冷ややかな視線をエドアルドに向けたラファエロが呟くと、隣で嫋やかな淑女の仮面を被ったリリアーナが可愛らしくクスクスと笑う。
「そう言えば、グロッシ侯爵令嬢とこうしてお話するのは初めてでしたね?」
リベラートがにこりと微笑みかけるとリリアーナも完璧な笑顔を貼り付けて返す。
「ええ。いつも伯母がお世話になっております」
「ふふ。こちらこそドロエット公爵夫人にはお世話になっていますからね」
グロッシ侯爵の姉、つまりリリアーナの伯母はオズヴァルドに嫁いだということはクラリーチェも聞いていたが、公爵夫人だというのは初耳だった。
「リリアーナ嬢の伯母上は、兄上の教育係として一緒にオズヴァルドに身を寄せて、そこでドロエット公爵に見初められたのですよ」
こそっとラファエロがクラリーチェに囁いた。
「エドアルド様の、教育係だったのですか………?」
「何だ、エドアルド。お前何も話していないのか。お互いをより深く知るためには、まずは自分を知ってもらう事が大切なのだぞ?」
諭すような口調でリベラートは、エドアルドの殺気を一蹴した。
「………それは、確かにそのとおりだが………」
言われてみれば、エドアルドの幼い頃の事はあまり知らないとクラリーチェは思った。
元々そんなに口数の多い男ではないが、殊に自分の事はあまり話したがらない。
キエザ王家の特殊な家族構成と、母親の事が原因で生じた軋轢のせいなのかもしれないとクラリーチェは感じた。
「折角の機会だ。幼い頃のエドアルドとラファエロの話をレディ達にお話しましょうか」
クラリーチェとリリアーナの表情を見たリベラートは、再びにやりと悪い笑みを浮かべた。
「「…………は?」」
エドアルドとラファエロが同時に、凍りついたような表情に変わった。
晩餐の席は様々な昔話を暴露するリベラートを必死に止めるエドアルドとラファエロ、そして楽しそうにそれを見守りながら聞き入るクラリーチェとリリアーナという構図の元、大いに盛り上がったのだった。
※閑話の予定だったのですが、修正しました。前話も閑話から本編に修正済みです。
申し訳ありません。
流石のリベラートもそこまでは知らないはずだが、見透かされているような気がして、クラリーチェは俯いた。
「ははは。照れるレディ・クラリーチェも可愛らしいな」
途端にエドアルドがギロリと殺気を含んだ視線をリベラートに向ける。
「そういうところが、女好きだと言うんだ」
「………その価値観はどうかと思うぞ。お前今までよく問題を起こさずに王太子をやってきたな」
「………いえ、問題を起こしかけたことは何度もありますけれどね」
「そういえば婚約者候補の王女やご令嬢を、会うことすらせずに追い返したんだったな」
思い出したように呟き、リベラートはまた心底愉しそうに笑った。
「………本当に、レディ・クラリーチェと出会ってなければ一生独身だったんだろうな」
「お陰でこちらは大変な苦労を強いられましたけれどね」
一瞬冷ややかな視線をエドアルドに向けたラファエロが呟くと、隣で嫋やかな淑女の仮面を被ったリリアーナが可愛らしくクスクスと笑う。
「そう言えば、グロッシ侯爵令嬢とこうしてお話するのは初めてでしたね?」
リベラートがにこりと微笑みかけるとリリアーナも完璧な笑顔を貼り付けて返す。
「ええ。いつも伯母がお世話になっております」
「ふふ。こちらこそドロエット公爵夫人にはお世話になっていますからね」
グロッシ侯爵の姉、つまりリリアーナの伯母はオズヴァルドに嫁いだということはクラリーチェも聞いていたが、公爵夫人だというのは初耳だった。
「リリアーナ嬢の伯母上は、兄上の教育係として一緒にオズヴァルドに身を寄せて、そこでドロエット公爵に見初められたのですよ」
こそっとラファエロがクラリーチェに囁いた。
「エドアルド様の、教育係だったのですか………?」
「何だ、エドアルド。お前何も話していないのか。お互いをより深く知るためには、まずは自分を知ってもらう事が大切なのだぞ?」
諭すような口調でリベラートは、エドアルドの殺気を一蹴した。
「………それは、確かにそのとおりだが………」
言われてみれば、エドアルドの幼い頃の事はあまり知らないとクラリーチェは思った。
元々そんなに口数の多い男ではないが、殊に自分の事はあまり話したがらない。
キエザ王家の特殊な家族構成と、母親の事が原因で生じた軋轢のせいなのかもしれないとクラリーチェは感じた。
「折角の機会だ。幼い頃のエドアルドとラファエロの話をレディ達にお話しましょうか」
クラリーチェとリリアーナの表情を見たリベラートは、再びにやりと悪い笑みを浮かべた。
「「…………は?」」
エドアルドとラファエロが同時に、凍りついたような表情に変わった。
晩餐の席は様々な昔話を暴露するリベラートを必死に止めるエドアルドとラファエロ、そして楽しそうにそれを見守りながら聞き入るクラリーチェとリリアーナという構図の元、大いに盛り上がったのだった。
※閑話の予定だったのですが、修正しました。前話も閑話から本編に修正済みです。
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