冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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本編

閑話 可愛い従兄弟(SIDE:リベラート)※読まなくても本編に影響ありません

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エドアルド達が部屋を出ていった後、小さく溜息をついたリベラートは、クラリーチェの言葉を思い出してふっと笑みを浮かべた。

「弱々しい娘だと聞いていたが、とんでもないな。エドアルドの方がよっぽど女々しいじゃないか」

リベラートには二人の弟がいるが、従兄弟であるエドアルドとラファエロも彼にとっては遠くに住んでいる弟と変わらない存在だ。
幼い頃に彼らがオズヴァルドで暮らしていた事もあるかもしれない。
特にエドアルドはリベラートの『お気に入り』だった。

真面目で潔癖なせいか、とてもからかいがいがある。だが、理由はそれだけではない。エドアルドが、どこか自分と似ているような気がして目が離せなかったのだ。
性格で言うなら、ラファエロのほうがリベラートに近いものはある。
何が似ているのかと言われれば上手く答えられないが、心の奥底で繋がっているような、そんな感情をリベラートはエドアルドに持っていた。

ふと、窓の外を見るとキエザの美しい海が目に入った。
開港祭を口実に、エドアルドがどんな娘を選んだのか気になって見に来たが、クラリーチェはリベラートの予想を遥かに超えた娘だった。
儚く、頼りない娘だと思ったが、冷静でしっかりとした意思を持っていた。
少し優し過ぎる気もしたが、厳しいエドアルドが一緒なら問題ないだろう。
リベラートの思惑に気が付いた事もだが、彼女になら、大切な『弟』を任せられると思った。
寧ろいつまでもエドアルドが煮えきらない態度を取り続けるのなら、一番下の実弟の伴侶にと本気で考えるくらいに。

「エドアルドにもラファエロにも、幸せになって貰いたいからな……」

フィリッポ愚王の政への無関心が、キエザを荒廃させていることを、オズヴァルドは随分前から把握していた。………そして、王妹リオネッラがその犠牲となったことも。
だが、リベラートの父であるオズヴァルド国王は、敢えて手を出さなかった。
既に立太子していたエドアルドと、その補佐役を担っていたラファエロに力を付けさせるためだったらしい。
そのせいで二人は日々忙しく過ごしていたのを知っているリベラートは、二人の幸せを切に願っていた。

「………殿下。ご指示のとおりに準備は整えました」

リベラートの背後で、オズヴァルドの『影』がタイミングを見計らったかのように報告に現れた。

「そうか」

リベラートは短く答えると、じっと海を見つめた。

「さて、もう一仕事するとするか」

そう言って、窓を開け放つ。
柔らかな潮風が、部屋の中を駆け抜けた。
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