冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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本編

203.リベラートの過去

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エドアルドは部屋に着くと、いつものようにクラリーチェを自分の膝の上に座らせた。
そして彼女の存在を確かめるように、ぎゅっと抱き締める。

「あの…………」
「すまない。少し浮かれているんだ」

少し恥ずかしそうに、エドアルドは呟いた。

「リベラートを、貴女があんなにも堂々と拒絶を示すとは、思いもしなかった。あいつは………」
「王太子殿下の過去に、何があったのですか?」

エドアルドの表情、そしてリベラートの言葉。
リベラートは既に二十九歳。今は他国の王女を娶っているが、子はいなかった筈だった。

「リベラートは、後悔しているのだ」

ぽつりと、エドアルドが呟いた。

「あいつは、面倒見もいいし、誰にでも平等に優しい。特に女性に対しては、どんな相手にも丁寧に接して、決して無下にしない。………自分で言うのも何だが、私の対極のような男だ。だが、その優しさ故に肝心の相手に、気持ちを伝えられなかったらしい」

エドアルドは懐かしそうに目を細めた。

「相手はオズヴァルドの貴族令嬢だが、親の決めた婚約者がいた。………彼女を妃にと望めば無理ではなかったはずだが、王族という立場を利用して彼女を手に入れれば、彼女が傷つくと思ったリベラートは、自分の気持ちを伝えずにいたらしい」
「………だから、後悔することになると仰ったのですね」

エドアルドは頷いた。

「今の妃とは、政略結婚でお互いに割り切っているらしいが、不和だという話は聞こえてこない所を見ると、それなりに上手くいっているのだろう」

クラリーチェはそこまで話を聞いて、ふと疑問に思ったことを口にした。

「………あら?いくら政略結婚とはいえ、王太子妃殿下は、王太子殿下の女癖の悪さを、窘めないのですか?」
「女癖の悪さ?何の話だ?」

エドアルドは怪訝そうに眉を顰める。

「え?でも、エドアルド様が最初に『オズヴァルドの王太子殿下は女好き』だと、仰ったではありませんか?」

クラリーチェは不思議そうに首を傾げた。

「………ああ。それは、あいつが『女の子は可愛いから、全員好きだ』と言っていたから………」

嫌な予感がして、クラリーチェはエドアルドをじっと見つめた。

「エドアルド様?………ちなみにそれはいったい…いつのお話ですか?」
「………あれは、確かまだ母の存命中だから……
私が四歳の頃の話だな」
「………ということは………王太子殿下もまだ七歳………」

予感が見事的中したクラリーチェは、物凄く警戒していたせいか、がっくりと肩の力が抜けていくのを感じた。
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