冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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本編

202.リベラートの忠告

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「王太子殿下のようなご立派な方であれば、私など口説かずとも、ずっと素敵なお相手が見つかるはずでしょう。それに、殿下のお言葉は失礼ながら、誠意が感じられませんでした。………本当は、私に興味などお持ちでないのではないでしょうか………?」

クラリーチェはリベラートに向かって、申し訳無さそうに目を伏せた。

「………お前、本当に素晴らしい姫君を見つけたな」

クラリーチェの言葉に、リベラートは大きく目を見開いた後に、感心したように呟いてからふっ、と顔が優しく緩めた。
まるで、被っていた仮面を外すように。

「レディ・クラリーチェ。興味がない、というのは違いますよ。侍女ですら近づくのを嫌がっていたエドアルドが一目で恋に落ちた相手なのだから、どれだけ魅力的な女性なのか、男なら誰しも興味を持つでしょう。………優秀な我が従兄弟殿の伴侶を選ぶ目に、狂いはなかったようで安心しました」
「やはり………私を試していらっしゃったのですね?」

エドアルドを挑発するような態度も、クラリーチェを誘惑するような振る舞いを取りながらも何処か冷たい視線を送ってきた事も、全て合点がいく。

「気がついていたのですね。………やはりエドアルドには勿体ないくらいの伴侶だな。何ならオズヴァルドに攫っていってしまいたい程だが、生憎女性を困らせるのは好きじゃない」

エドアルドに視線を合わせたリベラートは優しい笑みを浮かべた。

「しっかりと想いは通じ合っているのにも関わらず、お前が一人で何をぐずぐず悩んでいるのかは知らないが、いつまでも女性を待たせるものじゃない。いつまでも腹を括らないでいると、後悔することになるぞ。………かつての私のようにな。これは、私からの忠告だ。年長者の言うことは聞いておくものだぞ」
「…………っ、リベラート………それは………」

リベラートの言葉に、エドアルドが気まずそうな表情を浮かべ、何かを言いかけた。

「これでも長旅で疲れているんだ。少し休ませてくれないか?」

そんなエドアルドを遮るように溜息をつくと、リベラートはひらひらと手を振って出ていくように合図をした。
エドアルドは俯き小さく何かを呟くと、クラリーチェの腰に腕を回すと、素直にその指示に従ったのだった。

「あの、エドアルド様…………」

扉を閉めると、クラリーチェが戸惑いながらエドアルドを見上げていた。
瞬時に彼女が何を訴えているのか理解したエドアルドは、無言のまま頷いた。

「………まだ晩餐までは時間がある。少し話をしよう」

エドアルドは静かな声でそう告げると、クラリーチェを自室へと連れて行ったのだった。
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