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本編
193.仕切り直し
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翌日。
朝の鍛錬を済ませたエドアルドは宰相を呼び、議会の招集をかけるように伝えた。
内容は勿論、一連の騒動に関わった貴族たちの処分についてだ。
「…………開港祭を楽しみにしていた民にも、悪いことをしてしまったな」
手にした書類をばさりと机の上に投げ出すと、エドアルドは溜息をついた。
仕掛けてきたのは、ブラマーニ家の方だったが、その計画を知っていながら、敢えて利用したのはエドアルドに他ならなかった。
恵みを齎す海の神への感謝を示すための儀式も結局出来ないままになってしまったことに、エドアルドは後ろめたさを感じていた。
「………ならば、仕切り直しとして改めて開港祭を実施すればよいのてはないですか?」
エドアルドの傍らで、クラリーチェが小首を傾げた。
「………歴史を紐解くと、本来の開港祭の開催日以外に行われている例も多くあります。戦、天災など、理由は様々だったようですが………。 そもそも開港祭はキエザ発展の礎になったキエザ港が開港された記念日で、恵みをもたらす豊かな海を与えて下さった神への感謝とキエザのさらなる発展をを願う意味が込められたお祝いの日ですから、もう一度開港祭をやり直すことも可能ではないでしょうか?」
宰相を務めるカンチェラーラ侯爵が、綺麗に整えられた顎髭を撫でながら感嘆の声を漏らした。
「………流石にジャクウィント侯爵家の血筋ですな。妻が褒めちぎっていたのも、分かります」
「いえ、大したことでは………」
「貴女のその控え目で、奢らないところは美徳だが、もっと自信を持ったほうがいい」
恐縮しながら縮こまるクラリーチェを、エドアルドは抱き寄せながら囁いた。
「エドアルド様………」
恥ずかしそうに、クラリーチェは頬を紅く染めた。
「そういう所も、好ましいな」
クラリーチェの頬に口付けを落とすと、こほん、とカンチェラーラ侯爵が居心地悪そうに咳払いをしてみせた。
「………お二人共、私の存在をお忘れではありませんか?………そういう事は、二人きりの時にお願い致します」
困ったように視線を逸すと、広げた資料を手早く纏めた。
「ならば、早く二人きりにしろ」
率直すぎるエドアルドの言葉に、カンチェラーラ侯爵は苦笑いを浮かべた。
「………では、議会招集及び開港祭の再開催については承知致しました。すぐに準備に取り掛かります」
「ああ、人手不足の所悪いが頼んだぞ」
足早に立ち去るカンチェラーラ侯爵を見送ると、エドアルドはまたクラリーチェを己の膝に乗せると、幸せそうな笑みを浮かべながら執務に励むのだった。
朝の鍛錬を済ませたエドアルドは宰相を呼び、議会の招集をかけるように伝えた。
内容は勿論、一連の騒動に関わった貴族たちの処分についてだ。
「…………開港祭を楽しみにしていた民にも、悪いことをしてしまったな」
手にした書類をばさりと机の上に投げ出すと、エドアルドは溜息をついた。
仕掛けてきたのは、ブラマーニ家の方だったが、その計画を知っていながら、敢えて利用したのはエドアルドに他ならなかった。
恵みを齎す海の神への感謝を示すための儀式も結局出来ないままになってしまったことに、エドアルドは後ろめたさを感じていた。
「………ならば、仕切り直しとして改めて開港祭を実施すればよいのてはないですか?」
エドアルドの傍らで、クラリーチェが小首を傾げた。
「………歴史を紐解くと、本来の開港祭の開催日以外に行われている例も多くあります。戦、天災など、理由は様々だったようですが………。 そもそも開港祭はキエザ発展の礎になったキエザ港が開港された記念日で、恵みをもたらす豊かな海を与えて下さった神への感謝とキエザのさらなる発展をを願う意味が込められたお祝いの日ですから、もう一度開港祭をやり直すことも可能ではないでしょうか?」
宰相を務めるカンチェラーラ侯爵が、綺麗に整えられた顎髭を撫でながら感嘆の声を漏らした。
「………流石にジャクウィント侯爵家の血筋ですな。妻が褒めちぎっていたのも、分かります」
「いえ、大したことでは………」
「貴女のその控え目で、奢らないところは美徳だが、もっと自信を持ったほうがいい」
恐縮しながら縮こまるクラリーチェを、エドアルドは抱き寄せながら囁いた。
「エドアルド様………」
恥ずかしそうに、クラリーチェは頬を紅く染めた。
「そういう所も、好ましいな」
クラリーチェの頬に口付けを落とすと、こほん、とカンチェラーラ侯爵が居心地悪そうに咳払いをしてみせた。
「………お二人共、私の存在をお忘れではありませんか?………そういう事は、二人きりの時にお願い致します」
困ったように視線を逸すと、広げた資料を手早く纏めた。
「ならば、早く二人きりにしろ」
率直すぎるエドアルドの言葉に、カンチェラーラ侯爵は苦笑いを浮かべた。
「………では、議会招集及び開港祭の再開催については承知致しました。すぐに準備に取り掛かります」
「ああ、人手不足の所悪いが頼んだぞ」
足早に立ち去るカンチェラーラ侯爵を見送ると、エドアルドはまたクラリーチェを己の膝に乗せると、幸せそうな笑みを浮かべながら執務に励むのだった。
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