冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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本編

187.謝罪

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「すまない………本当にクラリーチェには辛い思いをさせてしまった………」

エドアルドの腕に力が込められた。
クラリーチェはエドアルドの顔に、自責の念が浮かんでいるのを見て取った。

「エドアルド様………?」

クラリーチェが静かに声をかけると、堪らないといった風に、エドアルドはクラリーチェを閉じ込めていた腕を緩めると、ソファへと誘導した。
いつもならば、人目も憚らず自分の膝の上にクラリーチェを乗せるというのに、今日はお互いしか部屋にクラリーチェの隣に静かに腰を降ろした。

「………私には、貴女に触れる資格などないというのに………貴女に触れたくて仕方がない。………クラリーチェ。貴女を守り、幸せにするとあの夜誓ったというのに、私は………っ」

そう早口で呟くと、エドアルドは強く握りしめた拳で己の腿を叩いた。
その拳は、僅かに震えているように見えた。

「…………あの開港祭で、事故に見せかけてブラマーニ公爵達が仕掛けてくることを、私は事前に知っていた。………勿論、ラファエロや………そしてリディアやダンテもだ。………事前に情報を知っていながら、結局貴女を、一歩間違えれば死んでしまうような危険な目に遭わせて、あんな表情をさせた自分自身が、私は許せないのだ」

リディア達の言動から、ブラマーニ家の謀略をエドアルド達が事前に知っていたらしいことは、クラリーチェは予想していた。
コルシーニ伯爵家を以ってすれば、それくらいは容易いのだろう。
だが、エドアルドは、厳しい人だ。それは、他人に対してだけではなく、自分に対しても。
………結果的に、何も無かったのだが、それでも完璧を追い求めるエドアルドにとっては、許し難い失態だったのだろう。

「船が揺れても、貴女を抱いていれば問題ないと考えていた自分の甘さと、あの時貴女の体を離してしまった自分の愚かさが、心底憎い………」

エドアルドは、クラリーチェを守るための予防策として自身をを抱き締めていてくれたのだと、初めて知る。

「本当ならば、貴女にもブラマーニ家の謀略について話しておくべきだったと思う。………だが、貴女は素直で優しく、謀をするには向いていない。………故に、敢えて貴女には何も伝えないほうがいいと、そう考えた…………。結果的に貴女を苦しめ、辛い思いをさせてしまった………」

苦虫を噛み潰したような顔をして、エドアルドは俯いた。
あの事故のせいで、胸が潰れるような思いをした。………でもそれ以上に、やはり自分にはエドアルドしかいないという事を再認識した。
クラリーチェはエドアルドの拳に、そっと掌を重ねた。

「………私は、エドアルド様に………もっと触れてほしいです………」

思わず零れた本心に、それを口にしたクラリーチェ自身が驚いてしまう。
エドアルドもまた、大きく目を見開いてクラリーチェを見ていた。
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