冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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本編

183.心配

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エドアルド達によりブラマーニ家への断罪が行われている頃、クラリーチェはリディアとカンチェラーラ侯爵夫人に付き添われて自室に戻っていた。

「リディア、本当に体調は大丈夫なの?」

クラリーチェはテキパキと動くリディアに心配そうに声を掛ける。

「はい、問題ありません。クラリーチェ様にはご心配をお掛けして大変申し訳ございませんでした」

無駄のない動きで丁寧にお辞儀をすると、リディアは湯浴みの準備を始めながら話を始めた。

「言い訳にしかなりませんが、………少し、油断してしまったのです。開港祭で、奴らが何か仕掛けてくる事は分かっておりましたから、それを逆手にとって一網打尽にしようと、陛下と王弟殿下が作戦を立てて下さったのです。そちらの事で頭がいっぱいで………。奴らにとってはクラリーチェ様の身辺を守る私が邪魔だったのでしょうね。………食事に毒を盛られました」
「え…………?」
「一口で気がついたので、熱が出た程度で済みましたが………毒に慣れた私でなければ死んでいたでしょうね。クラリーチェ様をお守りする立場だというのに不甲斐ないと、両親から叱られてしまいました」

クラリーチェはリディアの恐ろしい言葉に青ざめる。
だが、常人なら一口で死に至る毒を盛られた当の本人は、何でもないことだと言わんばかりに平然としていた。

「勿論犯人は、ブラマーニ家の手の者でしたが、きちんといたしましたのでご安心下さいませ。それに、私の姿が見えないことで、奴らも少し安堵したらしく、隙だらけになったのは好都合でしたけれど………」

心配しているのはリディア自身の事についてなのだが、リディアは違う受け取り方をしたようだった。

「此度の粛清で、良からぬ野望を抱く者達は全て排除されます。今後はこのようなことは起こらないとは思いますが、改めて気を引き締め、クラリーチェ様に誠心誠意お仕えして参る所存です」

そう言ってリディアはもう一度丁寧にお辞儀をした。

「リディア………」

クラリーチェはゆっくりとリディアに歩み寄る。

「………顔を、上げてちょうだい?」
「はい」

言われたとおりにリディアが顔を上げると、クラリーチェはリディアの頬に掌を当てた。

「私は、あなたが心配なのです。………あなたの任務は分かっています。そしてあなたがその任務に忠実であることも。………でも、リディア。あなたは私の大切な侍女です。あなたに何かあれば、私は悲しいわ」

クラリーチェの諭すような穏やかな言葉に、リディアがはっと目を見開いた。
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