冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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本編

181.大切なもの

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「この………狂人………!ほんっとうに、どこまでも腐ってますわね!クラリーチェ様になんて事を………っ!」

リリアーナが非難の視線を向けながらジュストを罵るが、当のジュストは乾いた不気味な嗤い声を上げ続ける。
口や足の傷から血が飛び散るのも構わずに嗤い続けるジュストは異様だった。

「………余程、死にたいらしいな」

エドアルドの双眸にがジュストを射止める。

「はははっ!私を殺すのか………?それもいいだろう。生きているのは退屈で仕方がない。………私を処刑した暁には、お前の治世が血塗られたものになるように、呪われたものになるように、祈ってやるさ………!」

狂人などという言葉では言い表せないような異常さに、エドアルドは一瞬眉を顰める。

「………そなたを殺すのは簡単だ。だが、それがそなたの望みだというのであれば、私はそれを叶えてやるほど優しくはない」
「……………は…………?」

思いもよらないエドアルドの言葉に、ジュストは天井を仰いだまま嗤いを止めた。
エドアルドを怒らせれば、逆上して首でも刎ねると思っていたのであろうジュストの思惑は裏切られた。

「罰は、本人にとって何よりも辛いものを与えなければ意味がないだろう………?…………そなたらを裁くと決めた時、各々にとって一番大切なものを奪ってやろうと決めたのだ。カストは、名誉と身分と財産、アマンダはジュストそなた、ディアマンテは己の容姿。それを全て奪い去り、絶望の中で死んでいけばいいと思っていた」

その場に残されていたアマンダとディアマンテは、エドアルドの言葉に慄いた。
だがエドアルドは構わずに続けた。

「そなたが大切なものは、自分自身だと思っていた。だが、死を望むということは………そなたは何にも執着することが出来ないようだな。………コルシーニ伯爵の言うとおり、『出来損ない』だ」

低く、だが抑揚のない声でエドアルドは言葉を紡ぐ。怒りが振り切れてなのか、それとも別の理由なのかは分からないが、その口調は穏やかなものだった。

「…………ならば、そなたには………一番の苦痛を………『頼むから死なせてくれ』とそなたが懇願するような、苦しみをそなたにはくれてやろう」
「あ………」

ジュストは呆然とした表情で、エドアルドを見た。
そんなジュストに向かって、エドアルドは冷たい表情は保ちつつも、僅かに嗤った。

「あぁ、それからクラリーチェの件だが………はじめから、そなたらの計画は知っていた。当然、そなたがクラリーチェに良からぬモノを使おうとしていたこともな。………催淫剤入りの香とやらは、あの場では使われていない。………残念だったな」

エドアルドが勝ち誇ったように、はっきり嗤うと、対象的にジュストの顔は怒りに歪んだ。
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