冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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本編

180.足掻き

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「ぐっ………貴様っ………離せっ!私に触るな!」

ラファエロの指示によりコルシーニ伯爵が片手でジュストの首を鷲掴みにすると、ジュストがまた喚き出す。

「何様のつもりだ、小僧?」

コルシーニ伯爵が、威嚇するように低く唸る。

「………この出来損ないはいつまでも己の立場というものを理解出来ないようだな」

リリアーナの手足の一撃により、左頬を腫らし、鼻の潰れたジュストは暴れる事すらも出来ずにコルシーニ伯爵に掴み上げられる。

「で、出来損ないだと………っ」
「事実だろう」

吐き捨てるようにそう言うと、コルシーニ伯爵は乱暴にジュストが括り付けられた椅子を降ろした。

「…………陛下、いかがなさいますか?」

これみよがしに指をボキボキと鳴らすコルシーニ伯爵の肩に、エドアルドが手を置いた。

「………私もそろそろクラリーチェの所へ行きたい。とりあえず、死なない程度に痛めつけておけ」

エドアルドはジュストを一瞥すると、もう自分の役目は終わったとでもいうように立ち去ろうとした。

「は………っ、そのクラリーチェ姫は今頃もう狂っているかもしれないというのに、何も知らずに………莫迦な奴だ………っ!」

はっと思い出したかのように、ジュストの紫暗色の瞳孔が開き、狂気の色が浮かび上がった。

「………何だと?」

地の底を這うような、怖気がするほどの殺気を孕んだ声が、エドアルドの口から零れた。

「お前達の船が沈んですぐに、クラリーチェ姫だけは溺れる前に助けあげる算段になっていた。………だが、すぐに助けたというのにクラリーチェ姫は意識を失っていた。本当に笑えるくらいにか弱くて儚い、私の理想通りのお姫様だよ………。仕方なく、我がブラマーニ公爵邸へとお連れして、意識が回復するまでにもてなしてやったのさ………!」

最早紳士を気取る気はないらしく、ジュストの言葉はかなり乱暴になっていた。

「………丁重なもてなしとは、具体的には何だ?」

エドアルドが怒りを露わにするのを見て、ジュストは痛みを忘れたかのように、にやりと顔を歪めた。

「クラリーチェ姫が眠っている間に、緩効性の、だが強力で中毒性の高い催淫剤を香に混ぜて焚いたんだよ。あぁ………お前がきちんと死んでいれば、今頃クラリーチェ姫は王太子の寝室で、私に組み敷かれていた筈だったのに………!それが実現できないのは残念だが、愛しい姫君はもう平常心ではいられないだろうな………。………はははっ!」

残念と言葉にしながらも、どこか愉しそうにジュストは嗤った。
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