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本編
179.もう一つの物語(2)
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「どうぞ、遠慮なさらずこちらに履き替えてください。…………そんな男の血が付着している靴を履いているなど、気持ちが悪いでしょう?………ああ、大丈夫ですよ。きちんと洗い清めてお返し致しますから、ご安心下さいね」
穏やかなエメラルド色の瞳に、自分の顔が映るのが見えて、リリアーナは呼吸が止まりそうになる。
そんなリリアーナの心の中を見透かすかのように、ラファエロは優しく、そして甘い声で囁いた。
「………ああ、もしかして………、私に履き替えのお手伝いをして欲しいのですか………リリアーナ嬢………?」
ラファエロの吐息が、リリアーナの頬に触れた。その瞬間、リリアーナの顔が薄紅色から朱赤へと、みるみる変わっていく。
「あ………あのっ………じっ、自分で………。自分で出来ますわ……っ」
震える声で何とかそう返すリリアーナは、先程までジュストを言い負かしていた令嬢と同一人物とは思えない位にしおらしい。
「そうですか………。残念ですね」
ふっと笑顔を浮かべ直すと、ラファエロは用意した靴を手渡す。
リリアーナはそのラファエロの目の前で、ぎこちない動きで靴を履き替えた。
「………そら見ろ!やはりラファエロに乗り換えたんじゃないか!この薄汚い雌猫が………っ!」
仰向けに倒れたままの体制で、ジュストがリリアーナを口汚く罵るのが聞こえてきた。
「………伯爵、そこの礼儀も弁えない、下賤の輩を起こしてやってください。父親同様関節くらいは外してもいいですよ」
ラファエロはリリアーナの履いていた靴をコルシーニ伯爵夫人に手渡し、綺麗にするように指示をすると、今度はコルシーニ伯爵に指示を出した。
「………息の根は止めなくて、よろしいのですか?」
「ええ、ソレには兄上も恨みがあるでしょうから、私が手を下す必要はないでしょう」
その端正な顔に浮かぶ嫣然とした微笑みを、リリアーナは恥ずかしそうに見つめていた。
その様子を、無表情故に『氷の伯爵夫人』との呼び名を持つコルシーニ伯爵夫人が僅かな微笑みを浮かべて、静かに見守っていた。
「………せっかくうちの息子のお嫁さん候補が見つかったと思いましたのに………残念ですわ………」
コルシーニ伯爵夫人が誰にも気が付かれないような小さな声でそう呟いたのを、コルシーニ伯爵は苦笑いしながら聞いていたのだった。
穏やかなエメラルド色の瞳に、自分の顔が映るのが見えて、リリアーナは呼吸が止まりそうになる。
そんなリリアーナの心の中を見透かすかのように、ラファエロは優しく、そして甘い声で囁いた。
「………ああ、もしかして………、私に履き替えのお手伝いをして欲しいのですか………リリアーナ嬢………?」
ラファエロの吐息が、リリアーナの頬に触れた。その瞬間、リリアーナの顔が薄紅色から朱赤へと、みるみる変わっていく。
「あ………あのっ………じっ、自分で………。自分で出来ますわ……っ」
震える声で何とかそう返すリリアーナは、先程までジュストを言い負かしていた令嬢と同一人物とは思えない位にしおらしい。
「そうですか………。残念ですね」
ふっと笑顔を浮かべ直すと、ラファエロは用意した靴を手渡す。
リリアーナはそのラファエロの目の前で、ぎこちない動きで靴を履き替えた。
「………そら見ろ!やはりラファエロに乗り換えたんじゃないか!この薄汚い雌猫が………っ!」
仰向けに倒れたままの体制で、ジュストがリリアーナを口汚く罵るのが聞こえてきた。
「………伯爵、そこの礼儀も弁えない、下賤の輩を起こしてやってください。父親同様関節くらいは外してもいいですよ」
ラファエロはリリアーナの履いていた靴をコルシーニ伯爵夫人に手渡し、綺麗にするように指示をすると、今度はコルシーニ伯爵に指示を出した。
「………息の根は止めなくて、よろしいのですか?」
「ええ、ソレには兄上も恨みがあるでしょうから、私が手を下す必要はないでしょう」
その端正な顔に浮かぶ嫣然とした微笑みを、リリアーナは恥ずかしそうに見つめていた。
その様子を、無表情故に『氷の伯爵夫人』との呼び名を持つコルシーニ伯爵夫人が僅かな微笑みを浮かべて、静かに見守っていた。
「………せっかくうちの息子のお嫁さん候補が見つかったと思いましたのに………残念ですわ………」
コルシーニ伯爵夫人が誰にも気が付かれないような小さな声でそう呟いたのを、コルシーニ伯爵は苦笑いしながら聞いていたのだった。
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