冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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本編

174.罪と罰(14)※少し残酷描写あり

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「……………っ」

真っ赤な唇はぱくぱくと動き、紫暗色の双眸は大きく見開かれる。
その表情が、全てを物語っていた。

「………無様で、哀れだな」

残酷なほどに美しい嘲笑を浮かべたエドアルドがぽつりと呟いた。

おそらく、ディアマンテはフィリッポを愛してはいなかったと、エドアルドは確信していた。
彼女が愛していたのはフィリッポではなく、『国王』に愛されている自分自身。誰よりも美しく、誰もが羨み、愛され、注目されるような理想の自分を己の中で作り上げ、その幻想の自分を愛していただけだ。
だから、どんなに足掻いても敵わなかったリオネッラやマリエッタは、彼女の中では排除すべき人間だったのだ。………自分が完璧であるために。

「あ………ああっ…………」

鼻先に触れるか触れないかという距離で血濡れの剣を突きつけられているせいで、俯くことすらも叶わないディアマンテは、絶望の嗚咽を漏らし始めた。
ディアマンテの自尊心を傷付けるのに、エドアルドとラファエロは成功したのだった。

「………ははっ、叔母上も案外あっけないな………。つまらない。………退屈で、死にそうだ………」

暫しの静寂に包まれた室内に、ジュストの落とした不気味な呟きが響き渡った。

口に剣先を捩じ込まれ、足の甲を刺されたというのに、そんな事はまるで無かったかのように、口と足から血を流しながら、ジュストが薄ら笑いを浮かべていた。

「相変わらず………気持ち悪い男………」

リリアーナが眉根を寄せると、ラファエロが微笑んだ。

「あとは兄と私でしておきますので、リリアーナ嬢はクラリーチェ嬢の所へ行かれてもも構いませんよ?」
「あら、ありがとうございます、王弟殿下。クラリーチェ様とご一緒できるのはとても魅力的なご提案ですけれど、そこにいる精神異常の元婚約者に、鉄槌を下してやりたくて参ったのですから、最後までお付き合い致しますわ」

普通のご令嬢であれば間違いなく、意識を手放すか、あるいは悲鳴を上げて逃げるかの二択しかないであろうこの尋問の場で、リリアーナは悲鳴一つ上げずに同席していた。

彼女の生家であるグロッシ侯爵家は、穏健派の筆頭ではあるが、当主………つまりリリアーナの父親をはじめ、豪傑の血筋として知られていた。
大勢の貴族が見ている中で、クラリーチェを助けるために婚約者を殴りつけ、婚約解消した後はその元婚約者一族の拷問見学の為に同席を願い出る辺りは間違いなくグロッシ侯爵令嬢であることを証明していた。
その、リリアーナが、ゆっくりとジュストの元へと歩み寄っていった。
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