冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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本編

172.罪と罰(12)

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「何一つ敵わないと分かっていたのなら、何か一つでも優れるように努力はしなかったのか?」

静かに、だが冷たくエドアルドが尋ねると、ディアマンテは弱々しく頭を振った。

「………そんな事、言われなくてもしたわ………!フィリッポ様に愛されるように、少しでも目を向けて頂けるように、自分を磨き、更に教養を身につけた。………それでも、持って生まれた身分や容姿、能力の差は、努力だけじゃ埋まらないのよ…………!………何より、あの女は子を授かれたのに、私にはそれが望めないと知った私の絶望など、誰にも分からないわ!…………どんなに欲しても手に入れられないものを、あの女は簡単に手に入れるのを目の当たりにしていたら…………ある日気がついてしまったのよ。ならば、あの女が手に入れた幸せを無理矢理にでも壊してやればいいって…………!」

涙を流したまま、ディアマンテは狂ったように笑いだした。

「…………何て自分本位な考え方ですの…………」

ため息混じりのリリアーナの呟きは、ディアマンテの耳には届かないようだった。

「お兄様にそれとなく話したらすぐに薬を用意してくださったわ。それを使って、実際に手を下したのはそこにいるカルロッタだけれど、…………あの女が死んだと報告を受けた瞬間、笑いが止まらなかったのを、今でも良く覚えているわ………!」

甲高い、耳障りな笑い声の中には何故か虚しさが含まれているようにも聞こえた。

「………でも、私が嫉妬したのは、リオネッラだけではないわ。エドアルド………あなたが大切にしているあの娘………クラリーチェの母親………マリエッタ…………!ああ、今思い出しても憎いわ………!」

泣きはらして血走ったディアマンテの紫暗色の瞳が、エドアルドを捉える。

「マリエッタは、爵位こそ私よりも劣っていたけれど、あのデビュタントの時の姿を見た瞬間、衝撃を受けたわ。その場にいた全員が、マリエッタの姿に釘付けになったのだもの………。………ようやく私を脅かす存在を消すことが出来たというのに、また新たな邪魔者が現れたと思った。………幸いフィリッポ様はお好みのタイプではなかったせいか、あまり興味はなかったようだけれど、それでも、この国に私よりも優れた淑女がいることが許せなかったわ………。それから暫くしてマリエッタがロレンツォに嫁いだのを知って少しは安堵したのだけれど………彼女は一番気がついてはいけないことに、気がついてしまった………。リオネッラの死の真相にね………」

ディアマンテは、再び笑いだした。
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