冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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本編

171.罪と罰(11)

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「まあ謝罪したところで、助かるわけではないですけれどね」

リリアーナの笑顔を見届けると、ラファエロはアマンダを解放し、騒げないように猿轡を咬ませておくようにコルシーニ伯爵夫人に指示する。
それから、リリアーナの横へと戻った。
同時に、兄同様に床に横たわるディアマンテにエドアルドが目を向けた。

「さて、待たせたな。気分はどうだ?」

気遣っているのではなく、どの程度意識を保っているかという確認のために、エドアルドは問い掛ける。

「あ…………」

ディアマンテの紫暗色の瞳が、怯えたように揺らいだ。
明確な回答はなかったものの、自白剤の効果でやや目は虚ろだが、意識ははっきりとしているようだった。

「………後宮の女帝が、………無様な姿になったものだな」

嘲りの言葉の奥に、強い憎しみが隠されていた。

「………っ、どうして………どうして私がっ、こんな………!」

相変わらず同じような言葉を口にするディアマンテにエドアルドは呆れ、嘆息した。

「どこかで聞いたような台詞だな。………ああ、確か火あぶりに処したトゥーリ伯爵夫人がそのような事を口にしていたぞ。………自尊心ばかり高く、ないものねだりばかりするような罪人の思考回路は皆同じということか」
「………エドアルドっ、ラファエロ!あなた達のせいよっ………あなた達が生まれてこなければ………あなた達の母親が、嫁いで来なければ、私はこんな目に遭わずに済んだのよ!」

嘆きにも似た、ディアマンテの叫びが部屋に響いた。

「…………自分の不甲斐なさを、人のせいにするのは簡単だ。そうやって、自分は悪くない、己の身に降りかかる不幸は全て他人が自分を貶めているからだと考えて生きているのはさぞかし楽だろうな」

感情的になっているディアマンテとは反対に、エドアルドもラファエロも冷静だった。

「何よ!………私の何が分かるというの?………あの女を………リオネッラを初めて見たときの私の気持ちが…………!」

ディアマンテが、人目も憚らずに泣き出した。
あの、高慢で、誰よりも自信に満ち溢れたディアマンテが慟哭する様子を、リリアーナが驚いた様子で見つめている。

「幼い頃から………お父様に………お前は美しくて賢いから、国王の正妃になるために生まれてきたのだと………っ。だから、私は信じて疑わなかったわ………!誰もが私に傅き、敬われる存在になるのだと………。それなのに、フィリッポ様はリオネッラを正妃にお選びになられた………。リオネッラはオズヴァルドの王女で、しかも私とは比べ物にならないくらいの美貌を誇り、優しく聡明だった。………私は、何一つあの女には敵わないと悟った時の私の気持ちを、誰が分かるというの………?!」

ディアマンテは、誰にも明かしたことのない心の底に押し込めていた感情を、顕にした。
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