冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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本編

169.罪と罰(9)

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「さて、今度は御婦人方の番ですよ」

穏やかなラファエロの声には、鋭い棘が含まれていた。

「あなた方も、そこで無様な姿を晒している男の身内ですから、誇りにされていた公爵夫人という身分はなくなってしまいましたね」

口元には薄い笑みが浮かぶが、目は全く笑っていない。

「私はっ、全ては公爵家を継ぐ、大切なジュストの為に動いていただけで………!」

肉体的に痛めつけられていないせいか、夫であるカストよりもはっきりとした口調で元ブラマーニ公爵夫人・アマンダが叫ぶ。

「では、あなたの最愛の息子であるジュストが、リリアーナ嬢を罵倒したり、彼女の見ている前で使用人に手を出しているを知っていながら、黙っていたでしょう?それどころか、理不尽にもリリアーナ嬢を虐げていたのですよね?」
「そうよ!ジュストは美しく、賢く、まさに神に選ばれた存在。だから何をしても許されるのよ………!」

アマンダの心からの言葉に、エドアルドもラファエロも、盛大に溜息をついた。
これだけの欠陥品を神に選ばれた存在と言い切れるのだから、親ばかの部分を差し引いてもあり得ない思考回路だ。
欲望だけは人一倍の残念な元公爵の妻としてはお似合いなのかもしれないが、このような人物が国に巣食っていたと思うと、何ともやりきれない気持ちになる。

「………流石はあの狂人の母親だな」

呆れたように、エドアルドが呟く。

「まぁ、ブラマーニ家の人間ですからね。………時に夫人。あなたは今までの件に関して、リリアーナ嬢に謝罪する気持ちはありますか?」

専ら、ラファエロの関心はリリアーナについての事のようだった。

「謝罪など、必要がないわ」

悪びれる様子もなく、むしろさも当然と言った風に、アマンダはそう呟いた。

「………それは、何故ですか?」

返される答えは目に見えていたが、敢えてそれを確認する。

「それは、ブラマーニ家の人間だからよ」

そのブラマーニ家は先程爵位と貴族としての身分を剥奪され、ただの平民の大罪人なのだが、自白剤の影響なのか、半分は自分の世界に入っていて、現在自分が置かれている状況を理解できていないようにも見えた。

「本当に、愚かで救いようのない方ですね………」

仄暗い笑みを浮かべると、ラファエロがアマンダに歩み寄り、乱暴に彼女の頭部を鷲掴みにした。

「例え平民であろうとも、女性に暴力を振るうような真似はしたくないのですが………今この場で切り捨てられたくなければ、リリアーナ嬢に、謝罪してくださいね」

先程広間でディアマンテの髪を切り払った事などなかったかのようにラファエロは形だけの笑みを貼り付け直し、アマンダの頭部を力任せに押さえつけた。
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