冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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本編

167.罪と罰(7)

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「陛下っ………何卒………何卒御慈悲をっ………!」

ブラマーニ公爵夫人が、苦しむ夫と息子を見ながら、絶叫した。

「慈悲?………そなたらは、自らが陥れ、殺めた者達に慈悲を与えたか?」

エドアルドの声は、底冷えがするほどに冷たいものだった。
フェラーラ侯爵夫妻は、エドアルドの言葉を聞いて静かに目を伏せ、ブラマーニ公爵夫人は呆然としたあと、項垂れた。

「………いいえ………」
「では私が慈悲を与える必要など皆無だろう」

夫人の懇願をばっさりと切り捨てると、額に脂汗を滲ませたブラマーニ公爵を見下ろす。

「………毒を使った経緯は分かった。その続きを話せ」
「………じゃ、邪魔な人間を、毒を使って排除出来ると分かってから………、面白い程に事がうまく運ぶようになると、段々と欲が出てきてありとあらゆる悪事に手を染めた。………勿論そこで被害者面をしているロベルト達もな。………フィリッポ王は政に興味もなく、女を囲う事に忙しかったから、全て私の思い通りに動いた………。私の指示通りに動くサヴィーニ侯爵を宰相に据えて、いざというときは切り捨てられるようにした。………子が産めない可哀想なディアマンテが、肩身の狭い思いをしなくて済むように、………フィリッポの通いが少しでも減るように、大量に女を後宮に入れた。我々の息の掛かった家に協力させ、傍系の家や、平民などの娘をかき集め、表向きだけは側妃として、正式な婚姻は結ばせなかったのが、よもやこのような形で跳ね返ってくるとは………」
「………少し考えれば分かりそうな事ですけれどね」
「ええ、私も同感ですわ」

ラファエロとリリアーナが呆れたように呟いたが、足を炙られ、適量の数十倍の自白剤を使われたブラマーニ公爵の耳にはそれは届かない。

「そんな中、フィリッポが亡くなり、お前が即位して状況は一変した。………お前が言った通り、今までどおりにいかなくなり、私達は次第にお前達兄弟を亡き者にし、王位を簒奪することを考え始めた。………お前たち兄弟が、私にそんな野望を抱かせた。………そもそも、お前達は幼い頃から、私達を警戒していた。私達の息の掛かった人間は一切近づけなかった。………本当に、その聡さと潔癖さが憎たらしいと………常々思っていたよ」

苦しそうな吐息が、ブラマーニ公爵の口から漏れ出した。
この男は、先祖の怨念という呪縛に囚われ、欲に身を任せた結果破滅した、惨めな男と言えるのかもしれない。
だが、彼の行いは到底許されるものではなく、また、エドアルドは許す気など微塵もなかった。
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