冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

文字の大きさ
上 下
80 / 268
本編

162.罪と罰(2)※残酷・暴力描写あり

しおりを挟む
「わ、私は直接手を下していないわっ!やったのはロベルトやカルロッタよ………!それに命令したのだってお兄様だわ………!何も知らない私が、どうして責められなければならないの………?!」
「………本当に、学習能力のない女だな」

苛立ちのせいか、エドアルドの言葉遣いがこころなしか荒っぽくなる。

「自分は知らない、悪くないと喚くのならば、それを証明し得る証拠を出してみろ」

エドアルドはディアマンテが縛られている椅子を、蹴り倒した。
ディアマンテは冷たい石の床に体ごとたたきつけられ、苦悶の表情を、浮かべる。
それでも、何とか乱れた呼吸を繰り返しながら、言葉を紡いでいく。

「それなら、カルロッタが知っているわ!カルロッタがリオネッラに毒を盛ったのだもの………!それはお兄様の指示よねっ?!」

短い髪を振り乱し、紫暗色の瞳は血走り、化粧も剝がれかかったディアマンテを美しいと思うものは、いないだろう。それくらい、ディアマンテの今の姿は醜悪だった。

「………いいえ、ディアマンテ様。私は、あなた様の心に従っただけです」

俯きながら、フェラーラ侯爵夫人が答えた。
彼女の瞳は絶望に染まりながらも、そのどこかに安堵の色が見えていた。それは、隣で縛られているフェラーラ侯爵も同じだった。

「なっ、何を言うの?!私の心ですって………?」
「ええ、そのとおりです。あなたは、常に自分が頂点に立たなければ気の済まない方ですもの。………フィリッポ前国王陛下との婚姻を強く望んだのも、第一側妃ではなく、正妃という立場に、異様に執着していたのも、全てはディアマンテ様………あなたの自己顕示欲を満たしたいがためでございましょう?それに、正妃でいらっしゃったリオネッラ様は女神のように美しく、聡明で慈愛に満ちた素晴らしい方でした。その上、陛下と殿下………二人の子を授かって………それが妬ましかったのですよね?」

フェラーラ侯爵夫人の言葉に、ディアマンテの顔が怒りに歪んだ。

「………っ、お黙り!薄汚い下位貴族の娘だったお前を、取り立ててやったのは誰だと思っているの?!」
「その点は、夫共々感謝しております」

激昂しているディアマンテとは対象的に、フェラーラ侯爵夫人は淡々としている。

「ディアマンテ様、いい加減認めたらどうですか?もう分かっているでしょう?」

ラファエロが、いつの間にか手にしていた剣を、ディアマンテの目の前の床へと突き刺した。
ガキン、と鋭い音が走り、ディアマンテはあまりのショックに、失神した。
しおりを挟む
感想 641

あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。