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本編
161.罪と罰(1)※やや暴力描写あり
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広間を出たエドアルドが向かったのは、ブラマーニ公爵達を閉じ込めてある部屋だった。
その前に、別室に立ち寄るとエドアルドは近衛騎士の甲冑を脱ぎ、簡素な服装に着替えると準備運動でもするかのように、両肩をゆっくりと回した。
「ここのところ、甲冑など着る機会がなかったからな。……久しぶりだと、体が強張る」
「それは甲冑のせいではなく、海で溺れたフリをして、人目のない港の端にある岩陰まで、慣れない遠泳などしたからではないですか?」
「………キエザは海の国だ。その国を治める王なのだから遠泳くらい出来て当然だろう」
「それに付き合わされる、私や近衛騎士の身にもなって下さい。兄上と違って、私は繊細なのですからね」
溜息をつくラファエロを横目に、本来の目的の部屋へと足を向けた。
本当ならば、一刻も早くクラリーチェの所へ駆け付けたいが、それは全ての憂いを取り除いてからと決意していた。
「………陛下。ご指示通りに用意を致しました」
部屋の中には、厳重に鎖で縛り上げられ、椅子に座らされたブラマーニ公爵たちの他、厳つい顔の体格の良い中年男性と無表情の中年女性が一人ずつ。それから近衛騎士が数名いるだけだ。
「ああ」
中年男性の方は、コルシーニ伯爵、女性はコルシーニ伯爵夫人。つまり、ダンテやリディア達の両親であり、王の影を率いる存在だ。
姿を現したエドアルド達に対して、伯爵夫妻は恭しく頭を下げる。
そんなエドアルドに最初に食って掛かったのは、ディアマンテだった。
「エドアルド………!私をこんな目に合わせて………よくも………っ」
「………あなたも本当に懲りないヒトですね。………罪人の分際で、王である兄上の名を軽々しく口にするとは………」
驚いたようにそう呟いたのは、ラファエロだった。
「お黙り、ラファエロ!この私を罪人扱いするだなんて………、恥を知りなさい!」
「罪人扱い?何を言っている。立派な罪人なのだから当然だろう」
エドアルドの双眸はどろりと濁った、強い怒りが滲んでいて、それを見てしまったディアマンテは一瞬、言葉を失う。
「手の骨を踏み砕かれたくらいでは、己の立場が理解出来なかったか………?」
「な、………や、止め………っ!」
靴を脱がされ、抵抗できないように椅子に括り付けられた裸足のままの足を、軽く踏みつけると、それだけでディアマンテは悲鳴を上げた。
「それだけで悲鳴をあげるなどとは、情けないですね。あなた方が殺した人々に味わわせた無念と絶望をたっぷりと味わっていただかなければいけないのですから、もっと頑張って下さい」
天使の微笑みを浮かべたラファエロが、優しく囁いた。
その前に、別室に立ち寄るとエドアルドは近衛騎士の甲冑を脱ぎ、簡素な服装に着替えると準備運動でもするかのように、両肩をゆっくりと回した。
「ここのところ、甲冑など着る機会がなかったからな。……久しぶりだと、体が強張る」
「それは甲冑のせいではなく、海で溺れたフリをして、人目のない港の端にある岩陰まで、慣れない遠泳などしたからではないですか?」
「………キエザは海の国だ。その国を治める王なのだから遠泳くらい出来て当然だろう」
「それに付き合わされる、私や近衛騎士の身にもなって下さい。兄上と違って、私は繊細なのですからね」
溜息をつくラファエロを横目に、本来の目的の部屋へと足を向けた。
本当ならば、一刻も早くクラリーチェの所へ駆け付けたいが、それは全ての憂いを取り除いてからと決意していた。
「………陛下。ご指示通りに用意を致しました」
部屋の中には、厳重に鎖で縛り上げられ、椅子に座らされたブラマーニ公爵たちの他、厳つい顔の体格の良い中年男性と無表情の中年女性が一人ずつ。それから近衛騎士が数名いるだけだ。
「ああ」
中年男性の方は、コルシーニ伯爵、女性はコルシーニ伯爵夫人。つまり、ダンテやリディア達の両親であり、王の影を率いる存在だ。
姿を現したエドアルド達に対して、伯爵夫妻は恭しく頭を下げる。
そんなエドアルドに最初に食って掛かったのは、ディアマンテだった。
「エドアルド………!私をこんな目に合わせて………よくも………っ」
「………あなたも本当に懲りないヒトですね。………罪人の分際で、王である兄上の名を軽々しく口にするとは………」
驚いたようにそう呟いたのは、ラファエロだった。
「お黙り、ラファエロ!この私を罪人扱いするだなんて………、恥を知りなさい!」
「罪人扱い?何を言っている。立派な罪人なのだから当然だろう」
エドアルドの双眸はどろりと濁った、強い怒りが滲んでいて、それを見てしまったディアマンテは一瞬、言葉を失う。
「手の骨を踏み砕かれたくらいでは、己の立場が理解出来なかったか………?」
「な、………や、止め………っ!」
靴を脱がされ、抵抗できないように椅子に括り付けられた裸足のままの足を、軽く踏みつけると、それだけでディアマンテは悲鳴を上げた。
「それだけで悲鳴をあげるなどとは、情けないですね。あなた方が殺した人々に味わわせた無念と絶望をたっぷりと味わっていただかなければいけないのですから、もっと頑張って下さい」
天使の微笑みを浮かべたラファエロが、優しく囁いた。
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