冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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本編

160.粛清(2)

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「その通りだ。………貴族として、そんな事も知らずに生きてきた貴族がこれ程までに多いとは………我が国は一体どうなっているのだろうな?」

大げさなくらいに溜息をつくと、がっくりと肩を落として眉間に皺を寄せた。
ラファエロがそんな兄を慰めるようにぽんぽん、と肩を叩く。

「兄上。私が思うに、世襲制により継承され続けてきた結果、本人の力量や人格に、見合わないものになってしまった結果でしょうね。そうですね………例えば、王族に生まれたからといって、必ずしも王に相応しい人物が生まれてくるとは限らない………。王の資質に不可欠なのは、欲望などではなく、生まれ持った力量と、施された教育を理解する頭脳、そして物事を冷静に判断出来る公正な目でしょう。それは王族に限らず、貴族においても当て嵌まるでしょう。生まれながらにその権利を持っていると、必然的に義務を果たすことを忘れていくのでしょうね。………勿論、真っ当な貴族も一定数いるのは事実ですので、全てがそれに当て嵌まる訳ではないのですが」

自分達の父親を例えとして出しながら、上手く貴族達を批判するラファエロに、エドアルドはにやりと嗤った。

「確かに、その通りだ。………では、自身の利益のみを追求し、貴族として果たすべき義務すらも認識していなかった者達は、貴族として相応しくない………そういう結論に至るな?」
「ええ、………非常に残念ながらそういう事になります」

エドアルドの水色の瞳と、ラファエロのエメラルド色の瞳が、先程の問い掛けに答えられなかった貴族たちへと向けられると、彼らは一斉にその場に這いつくばり、諂い始めた。

「陛下っ………私は決して、貴族としての務めを忘れていた訳では………!」
「私もです!私は今まで国のために力を尽くして参りました………!」

口々に、保身のための言い訳を並べる貴族達は、命ずればエドアルドの足でも舐めそうな勢いだった。

「………そなたたちは、先程何を見ていた?」

そんな貴族達を見下ろしながら、冷たく問い掛ける。

「………は………?」

その問いが、何を意味しているのか、彼らには伝わっていないらしかった。

「ブラマーニ公爵達にも私は伝えたはずだ。既に証拠は揃っている、と。そなたらが、公爵の謀略に加担していた事まで含めてという意味だ。………首謀者を捕えただけで、この私が他を見逃すとでも思っていたか?それとも、自分だけは大丈夫だと思っていたか?………どちらにしてもおめでたい思考だな」

エドアルドは、纏ったマントをバサリと翻した。

「これは、キエザを生まれ変わらせるための、粛清だ。私の治世に、甘い汁に群がることしか能がない、まして謀反に加担するような者は要らぬ。…………罪人共を、捕らえろ。一人残らずな」

エドアルドは広間の扉に向かって歩き出すと、背後から近衛騎士達の物々しい足音と、急進派をはじめとした貴族たちの阿鼻叫喚が追い掛けてくる。
だが、エドアルドはその悲鳴を聞き流すかのように、その場を立ち去っていく。
そして、その後ろをラファエロとリリアーナが追いかけるのだった。
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