75 / 268
本編
157.不本意
しおりを挟む
リディアの手によって後手に縛られ、エドアルドの足元に転がされたジュストは、屈辱に顔を歪めた。
「結果が全てのあなたにとって、これはさぞかし不本意でしょうね」
リリアーナが、そんなジュストを見下ろしながら呟くと、ジュストは瞳孔を開いたまま、仄暗い視線を向けてきた。
「不本意………?そんなものではすまない。………この上ない屈辱だよ………。お前にそんな顔で見下されるのもね………」
ジュストは、低い声を吐き出す。
「あら、私は物凄く気分がいいわ」
リリアーナは満面の笑みを、ジュストへと向けた。
「黙れ、リリアーナ」
ジュストは縛られた無様な姿を見られてもなお、強気な姿勢は崩さなかった。
「何の罪もない淑女に対して、その態度はいただけませんね」
ラファエロが、リリアーナを庇うように、後ろに下がらせた。
「………でも、一つあなたを褒めて差し上げなければなりませんでした」
ラファエロはにこりと微笑むと、ジュストの腹部を蹴り上げた。
「ガハッ!」
「ブラマーニ公爵家の面々の中で唯一、あなただけは明確な罪を犯していなかったので、どうしたものかと考えていたのですよ。………罪人でなければ、ブラマーニ公爵家から爵位を取り上げて、あなたを平民に落とすことは出来ても、捕らえて処罰する事は叶いませんからね………。それが、クラリーチェ嬢の美しさに目が眩んだあなたが、わざわざ騒ぎを起こして捕らえる理由を与えてくれたのですからね」
ラファエロの言葉に、ジュストは大きく目を見開いた。
指摘されて初めて、その事実に気が付いた。
どうせ捕まるのならば、クラリーチェだけを手に入れて、逃げ出せばいいと考え、衝動的に行動を起こした。………まさか、それが仇になるなどとは全く考えていなかった。
「そん………な………、莫迦な………!」
みるみるうちに、ジュストの顔から血の気が失せていく。
「本当に、愚かなことだな」
エドアルドが、その顔に哀れみを浮かべながら呟いた。
「私を、嵌めたのか………?!」
「嵌めた?………勘違いするな。これは全てそなた自身が招いた事だ」
エドアルドが、突き放すように冷たく言い放った。
「私の最愛を、お前は傷付け、汚そうとした。………後で両親同様、ゆっくりと話を聞かせてもらおう。………こやつも連れて行け」
エドアルドはジュストを振り返ることもなく、クラリーチェの体を抱え上げると、彼女の額に口付けを一つ落とし、連行されていくジュストに見せつけたのだった。
「結果が全てのあなたにとって、これはさぞかし不本意でしょうね」
リリアーナが、そんなジュストを見下ろしながら呟くと、ジュストは瞳孔を開いたまま、仄暗い視線を向けてきた。
「不本意………?そんなものではすまない。………この上ない屈辱だよ………。お前にそんな顔で見下されるのもね………」
ジュストは、低い声を吐き出す。
「あら、私は物凄く気分がいいわ」
リリアーナは満面の笑みを、ジュストへと向けた。
「黙れ、リリアーナ」
ジュストは縛られた無様な姿を見られてもなお、強気な姿勢は崩さなかった。
「何の罪もない淑女に対して、その態度はいただけませんね」
ラファエロが、リリアーナを庇うように、後ろに下がらせた。
「………でも、一つあなたを褒めて差し上げなければなりませんでした」
ラファエロはにこりと微笑むと、ジュストの腹部を蹴り上げた。
「ガハッ!」
「ブラマーニ公爵家の面々の中で唯一、あなただけは明確な罪を犯していなかったので、どうしたものかと考えていたのですよ。………罪人でなければ、ブラマーニ公爵家から爵位を取り上げて、あなたを平民に落とすことは出来ても、捕らえて処罰する事は叶いませんからね………。それが、クラリーチェ嬢の美しさに目が眩んだあなたが、わざわざ騒ぎを起こして捕らえる理由を与えてくれたのですからね」
ラファエロの言葉に、ジュストは大きく目を見開いた。
指摘されて初めて、その事実に気が付いた。
どうせ捕まるのならば、クラリーチェだけを手に入れて、逃げ出せばいいと考え、衝動的に行動を起こした。………まさか、それが仇になるなどとは全く考えていなかった。
「そん………な………、莫迦な………!」
みるみるうちに、ジュストの顔から血の気が失せていく。
「本当に、愚かなことだな」
エドアルドが、その顔に哀れみを浮かべながら呟いた。
「私を、嵌めたのか………?!」
「嵌めた?………勘違いするな。これは全てそなた自身が招いた事だ」
エドアルドが、突き放すように冷たく言い放った。
「私の最愛を、お前は傷付け、汚そうとした。………後で両親同様、ゆっくりと話を聞かせてもらおう。………こやつも連れて行け」
エドアルドはジュストを振り返ることもなく、クラリーチェの体を抱え上げると、彼女の額に口付けを一つ落とし、連行されていくジュストに見せつけたのだった。
34
お気に入りに追加
7,132
あなたにおすすめの小説
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~
矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。
隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。
周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。
※設定はゆるいです。
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。