冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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本編

157.不本意

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リディアの手によって後手に縛られ、エドアルドの足元に転がされたジュストは、屈辱に顔を歪めた。

「結果が全てのあなたにとって、これはさぞかし不本意でしょうね」

リリアーナが、そんなジュストを見下ろしながら呟くと、ジュストは瞳孔を開いたまま、仄暗い視線を向けてきた。

「不本意………?そんなものではすまない。………この上ない屈辱だよ………。お前にそんな顔で見下されるのもね………」

ジュストは、低い声を吐き出す。

「あら、私は物凄く気分がいいわ」

リリアーナは満面の笑みを、ジュストへと向けた。

「黙れ、リリアーナ」

ジュストは縛られた無様な姿を見られてもなお、強気な姿勢は崩さなかった。

「何の罪もない淑女に対して、その態度はいただけませんね」

ラファエロが、リリアーナを庇うように、後ろに下がらせた。

「………でも、一つあなたを褒めて差し上げなければなりませんでした」

ラファエロはにこりと微笑むと、ジュストの腹部を蹴り上げた。

「ガハッ!」
「ブラマーニ公爵家の面々の中で唯一、あなただけは明確な罪を犯していなかったので、どうしたものかと考えていたのですよ。………罪人でなければ、ブラマーニ公爵家から爵位を取り上げて、あなたを平民に落とすことは出来ても、捕らえて処罰する事は叶いませんからね………。それが、クラリーチェ嬢の美しさに目が眩んだあなたが、わざわざ騒ぎを起こして捕らえる理由を与えてくれたのですからね」

ラファエロの言葉に、ジュストは大きく目を見開いた。
指摘されて初めて、その事実に気が付いた。
どうせ捕まるのならば、クラリーチェ欲しい物だけを手に入れて、逃げ出せばいいと考え、衝動的に行動を起こした。………まさか、それが仇になるなどとは全く考えていなかった。

「そん………な………、莫迦な………!」

みるみるうちに、ジュストの顔から血の気が失せていく。

「本当に、愚かなことだな」

エドアルドが、その顔に哀れみを浮かべながら呟いた。

「私を、嵌めたのか………?!」
「嵌めた?………勘違いするな。これは全てそなた自身が招いた事だ」

エドアルドが、突き放すように冷たく言い放った。

「私の最愛を、お前は傷付け、汚そうとした。………後で両親同様、ゆっくりと話を聞かせてもらおう。………こやつも連れて行け」

エドアルドはジュストを振り返ることもなく、クラリーチェの体を抱え上げると、彼女の額に口付けを一つ落とし、連行されていくジュストに見せつけたのだった。
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