冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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本編

154.苦悩

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「エドアルド様の………国王陛下の婚約者として、私の考えは甘すぎると思われるのは承知しております。ですが………犯した罪の報いを受ける必要があるとしても、今、この場でではないはずです」

淡い紫の瞳には、涙が浮かんでいた。
エドアルドはゆっくりと、ディアマンテから足を退けると、クラリーチェを振り返った。

「………クラリーチェ………」
「これだけの目に晒されれば、ご自身のしたことの罪深さは、お分かりになられたでしょう。………ですが陛下、この場には血生臭い光景に慣れていない淑女方もいらっしゃいます。………ですから、これ以上ディアマンテ様をこの場で責めるのは、お止めください」

エドアルドはクラリーチェの懇願に、困ったような表情を浮かべた。
つい怒りに我を忘れて、ディアマンテを心のままに甚振ってしまった事に気が付いたためだ。

「………すまない」

ぽつりと、エドアルドが呟いた。

「………母の事が分かってから、ずっとこの女を懲らしめてやりたいと思い続けていた。………そのせいで、ラファエロはずっと苦しんでいた。自分が生まれてきたせいで、母は身罷られたと………。自分がいなければ、母はまだ健在であったはずだと。………ラファエロは誕生日が来るたびに、私に謝ってきた。………母を取り上げてしまってすまない、と」

苦々しい顔をしながら、エドアルドは拳を握りしめた。

「加えて、母の死の真実を知ったクラリーチェの両親も殺された事を知って、更に怒りがこみ上げてきた。………この女は、私が命よりも大切な二人を傷つけたのだからな」

エドアルドが、視線をディアマンテに移す。彼女はあまりの痛みに床を転げ回っているところだった。

「………だが、貴女の指摘は尤もだ。これは、淑女に見せるものではないな。………クラリーチェ、貴女を含めて………。少し、配慮が足りなかった」

エドアルドの表情が、僅かに軟化した。

「………この芋虫も、縛り上げて、そちらのタヌキ爺どもとへでも閉じ込めておけ。………くれぐれも、死なせないように、な」

エドアルドの命令に、近くの近衛騎士が機敏に動いた。
その様子を眺めていた、ほんの一瞬の隙を、は見逃さなかった。

「きゃ………!」

エドアルドのすぐ後ろに立っていたはずのクラリーチェは、目にも留まらぬ速さで動いたジュストの腕の中に囚われていた。
そしてそのジュストの手には短剣が握られおり、白銀の刃がクラリーチェの首元へと当てられていた。………先程、エドアルドがディアマンテに対してしていたのと同じように。
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