冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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本編

151.抵抗

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「………おのれ王家め…………、この私が何故………っ」

小さく、小さくそう呟いたのが、聞こえた。
ブラマーニ公爵が、罪を認め、贖おうとすることは、初めから期待などしていなかったエドアルドは、短く溜息をついた。

「………とりあえず縛り上げて、喚かないようにしておけ」

エドアルドはダンテにそう命じると、ディアマンテと、ジュストに視線を移した。

「さて、…………元正妃並びにブラマーニ公爵子息」

声を掛けられたディアマンテは、微動だにしなかった。
婀娜っぽく結い上げていた豊かな黒髪は乱れ、青白い顔に真っ赤な唇だけが異様に目立ち、まるで幽鬼のように見えた。
一方のジュストは、罪人として縛り上げられる両親を、無表情のまま眺めていた。

「………陛下………私は、私は知らなかったのです!」

ディアマンテが、エドアルドの足元にその身を投げ出し、哀れっぽく涙を浮かべながらエドアルドを見上げた。
変わり身の速さと状況判断能力の低さに、クラリーチェは少し驚いた。
フェラーラ侯爵や、ブラマーニ公爵のやり取りを目の前で見ていたはずなのに、この期に及んで、言い逃れをしようなどとは、普通なら考えないだろう。

「兄が、そんな恐ろしいことをしていただなんて………っ。私は長らく後宮に身を置いていましたから、何も………っ!」

そう訴えると、さも憐れっぽい表情を浮かべてみせた。
父王は、ディアマンテのこういったところに絆されたのだろうか。それとも年を経てもなお衰えを見せない、艶めかしい肉体に魅了されていたのだろうか。
そんな事を考えながら、エドアルドはディアマンテを見下ろした。

「ディアマンテ元正妃。………そなたのその耳は、ただの飾りか?」
「え………?」

やはり、状況が理解出来ていないらしいディアマンテに、エドアルドは薄っすらと微笑みを浮べて近寄ると、どこかに忍ばせていたらしい短剣を手にした。

「ひっ…………!」

エドアルドは無言のまま、ディアマンテの耳殻の当たりに、その刀身をぴたりと当てると、ディアマンテは小さく悲鳴をあげた。

「既にフェラーラ侯爵からの証言を、忘れたか?………そなたも我が母の殺害に関わっているのだから、知らなかったでは済まない事ぐらい、分かるだろう」

エドアルドの表情が、怒りを含み、彼の水色の瞳は、冷酷な光を宿す。

「もう、言い訳は聞き飽きた。既に証拠は揃っている。ジャクウィント侯爵邸を訪れたクラリーチェを狙って、襲撃をさせた証拠もな」

瞳と同じ冷たさを含んだエドアルドの言葉に、ディアマンテの紫暗色の瞳が大きく見開かれた。
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