冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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本編

149.問い

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「黙れ!そのような綺麗事で国など動かせぬわ!!」

吐き捨てるようにブラマーニ公爵がそう吠えると、エドアルドは呆れたように口元を歪めた。

「綺麗事、か。………本当に、愚かな事だな。帝王学の基本も知らぬ者が、よくもまあ恥ずかしげもなく自らが王に相応しいなどと言えたものだな。………我が高祖父は人徳者だったそうだが、いくら肉親でも、生温すぎる。情でなど動くからこのような事になるのだ。そもそも初代ブラマーニ公爵は恩赦など与える余地も見当たらん。………その廃太子の子孫なのだから、所詮この程度なのだろうな」
「ええ、全くそのとおりです。生かしておいてメリットのない王族など、臣籍降下などさせずに切り刻んで魚の餌にでもした方が、よっぽど有益だったでしょうね」

エドアルドに同意するラファエロが、虫も殺さないような顔で、しれっと恐ろしいことを呟くのが聞こえた。ラファエロの隣ではリリアーナが一瞬ぎょっとした顔をするのが見えた。

「そもそも本気で自分が王に相応しいと思っていたならば、何故、父から王位を簒奪しなかった?愚鈍な父からならば、王位の奪取は容易かったろう?」

あまりにも真っ当過ぎる問い掛けに、問われたブラマーニ公爵は驚いた顔をした。

「そ………れは………」
「真に、王位を欲しているのならば、いくらでも機会はあったはずだ。何故それをしなかった?」

エドアルドの問いに、ブラマーニ公爵は口籠る。
数多の視線がブラマーニ公爵に向けられ、彼は再び俯いた。
それはエドアルドの問いに、答えられないからだった。

「………何故答えぬ?」

静かに、エドアルドは囁いた。
ブラマーニ公爵が、自身の主張の矛盾に気付き、その理由を答えられないのを分かっていて、わざと、追い討ちをかける。

「………答えられぬのだろう」

エドアルドは無機質な声で語りかける。

「父の代では腐敗政治が繰り広げられ、不正により私腹を肥やすことが出来た。ジャクウィント侯爵家邪魔者を排除し、ディアマンテを父に嫁がせ、権力を握り、さぞかし良い思いをしただろう。だが父が崩御した途端に情勢が変わり、そなたは焦ったのだ。………自身が築き上げたものが、私の即位とともに失われようとした故に、自分に都合のいい王子の誰かを代わりにしようと考えた。………それも封じられたそなたは、徐々に、自分こそが王位に相応しいと考え始めた。………違うか?」

エドアルドの言葉に、ブラマーニ公爵が更に項垂れたのが見て取れた。
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