冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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本編

147.暴かれる罪(7)

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からん、と虚しい音が響き、その様をブラマーニ公爵は呆然として見つめた。

「………は………?」

絞り出された声は、掠れている上に吐息のように微かなものだった。
理解が追いつかないのか、自分の失態に気がついていないのか、ブラマーニ公爵は辺りをキョロキョロと見回した。
公爵夫人も、ディアマンテも、凍りついたかのようにその場で固まっていた。

「公爵、分かりませんか?………貴方は自分自身の口から、その瓶の中身が毒だと知っていることを暴露したのですよ?………それも、体内に取り込まなくても、触れただけで死に至る、猛毒であるという事を。これだけ大勢の前ですから取り消しはできませんが………さて、どうしましょうか?」

ラファエロが、穏やかな笑顔を浮べてわざとらしく肩をすくめて見せると、それまで呆けていたブラマーニ公爵はみるみる顔を赤く染め上げて、わなわなと震えだした。

「…………………っ」
「さすがに、言い訳すらも浮かばなくなったか?」

追い打ちをかけるようにエドアルドが言うと、ブラマーニ公爵は、まるで人が変わったように凄まじい表情を浮かべた。

「………ふざけるな………、ふざけるな!!」

先程の無様な悲鳴とは違う、強い怒りに満ちた声が響き渡った。

「………別にふざけてなどいない。私は事実を述べたまでだ」

エドアルドは視線だけを下に向けた。
ブラマーニ公爵の漆黒の髪からは、ぽたりぽたりとエドアルドが掛けた水が滴り落ちて、冷たい石の床に染みを作る。

「たった今、この私を謀ったろう!」

まるで錯乱したかのように、濡れた髪を振り乱してそう叫ぶと、エドアルドを睨みつけた。
謀るも何も、勝手に勘違いをして勝手に暴露したのだから、自爆というものだろう。
エドアルドは呆れながら短くため息をついた。

「謀るとは人聞きの悪い………。だが、証拠は他にもある。『銀の夢ソーニョアルジェント』が染み付いたブラマーニ公爵家の紋入りの布も希望があれば見せてやるし、その毒の生産地として知られているイズヴェルカ王国からのも、既に公爵領内で身柄を拘束しているから、証人として招いても構わんぞ」

淡々とした口調でエドアルドが告げると、ブラマーニ公爵夫人が、絶望の嘆き声を上げた。

「あああっ…………!」

そんな妻には目もくれず、ブラマーニ公爵は荒い呼吸を繰り返しながら歯を食いしばっていた。

「………貴様、よくもぉぉっ!」

怒りのせいか、声が裏返るのも憚らず、公爵は叫んだ。
    
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