冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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本編

143.暴かれる罪(3)

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「ブラマーニ公爵家が犯した罪の報いと言えば、そうなのでしょう。ブラマーニ公爵家は多くの罪なき命を奪ってきましたからね。………それに手を貸していた我がフェラーラ侯爵家が、言えたことではありませんがね」

フェラーラ侯爵は一瞬、嘲るような、それでいて憐れむような視線をディアマンテに向けた。
ディアマンテの紫暗色の瞳は、怒りを湛えて燃え上がっているようにさえ見えた。

「………エドアルド陛下の誕生から五年後、再びリオネッラ妃の懐妊が分かると、ディアマンテ様は、女官となっていた我が妻カルロッタを使って、リオネッラ妃に………」
「黙れと言っている!!」

フェラーラ侯爵の言葉を遮るように、ブラマーニ公爵は絶叫した。
だがそれは、ざわついていた貴族達を黙らせ、静寂を呼ぶきっかけとなった。
しんと静まり返った広間は、異様な雰囲気に包まれた。
それを待っていたように、フェラーラ侯爵は宣言するように、再び口を開く。
その隣で、フェラーラ侯爵夫人は震えながら、項垂れた。

「リオネッラ妃に、少量ずつ毒を盛ったのです。………どうやら胎内のラファエロ殿下には影響は及ばなかったようですが、リオネッラ妃が命を落としたのは、産褥によるものではないのです」

クラリーチェは大きく目を見開くと、両手で口元を覆った。
エドアルドと、ラファエロにちらりと視線を移すが、特に驚いた様子も、動揺も伺えないところを見ると、既にそのことを知っていたのだろう。
証拠を集めている途中で知っていたのか、或いはもっと前から知っていたのかは分からないが、エドアルド達の………殊に『母殺しの王子』と揶揄されていたらしいラファエロの心境は計り知れなかった。

周囲の貴族たちからは、明らかな動揺によるどよめきが、再び湧き上がった。

「………妻に罪を被せて、私達を悪者に仕立て上げるだなんて、大したものね。………誰のお陰で、侯爵になれたと思っているのかしら」

青白い顔には不釣り合いに見える、真っ赤な、まるで鮮血を塗りたくったかのようなディアマンテの唇が動いた。

「………確かにその当時、我がフェラーラ家はまだ力の弱い、伯爵位の一貴族でした。そんな家の嫡男であった私に、たまたまブラマーニ前公爵が目をかけて下り、重用してくださった。私は、前公爵のお陰で今の地位を手に入れることが出来たのです。………その恩義に報いる為に、私は今までブラマーニ公爵家の為に尽くして参りました。ですが、仕える相手を見誤ったようです」

自嘲の笑みを浮かべたフェラーラ侯爵は、懺悔のような言葉を、静かに落とした。
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