冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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本編

142.暴かれる罪(2)

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「その話が持ち上がるまでは、公爵令嬢であったディアマンテ様が正妃の最有力候補でした。当時権力を握っていたのは、ブラマーニ前公爵………公爵のお父上ですが、彼はずっと娘であるディアマンテ様をフィリッポ陛下の正妃に据えようと画策していたからです。………ですが、オズヴァルド王国は言わずと知れた大国。そんな国の王女と公爵令嬢ではどちらが正妃に相応しいのかなど一目瞭然。結局輿入れを阻むことは出来ませんでした」
「黙れ、ロベルト………!………ぐっ……」

ブラマーニ公爵はフェラーラ侯爵を黙らせようとして叫ぶが、身柄を拘束している近衛騎士により強く押させつけられ、うめき声を零した。

「嫁いで来られた王女は、美しく聡明で優しいお方で、好色なフィリッポ陛下はすぐに虜になった。そして生まれたのがエドアルド陛下………貴方です。ブラマーニ前公爵は王女が正妃となってすぐに第一側妃としてディアマンテ様を後宮に上げた。………しかし、懐妊でさえもリオネッラ妃に先を越された為に、当時のディアマンテ様は焦っていらっしゃったのですよね?」

フェラーラ侯爵の赤い瞳が、ディアマンテに向けられると、遠目でも分かるくらいにディアマンテの肩がびくりと揺れた。
彼女に、いつものような自信に溢れた、堂々とした雰囲気はなく、酷く怯えているように見える。

「そ、それは妃となれば当然の事でしょう………?後宮の役割は、王家の血を繋ぐことですもの」

精一杯平静を装いながら、ディアマンテは返答した。

「………他の貴族も、フィリッポ陛下が好色なのをいい事に、次々に側妃を送り込んできて、フィリッポ陛下がディアマンテ様の寝所に通う時間は短くなる一方。………そして、子を授かったという兆候もなしとなると、精神的にも追い込まれるでしょう。………まさかディアマンテ様が子を授かれない体だとは、ディアマンテ様自身も含めて思ってもおりませんでしたし」
「子が授かれない体………」

フェラーラ侯爵の言葉を、クラリーチェは静かに反芻した。
確かにディアマンテは、フィリッポからの寵愛を長い間受けていたにもかかわらず、最後まで子は授からなかった。
そう言えば、リリアーナがそんなようなことを言っていたと思い出し、思わずリリアーナの方に視線を移した。
すると、それに気がついたリリアーナは意味深な笑いを浮かべる。

「………様々な毒を少しずつ、胎内に取り込んでいたのが原因………でしたよね?」

フェラーラ侯爵の言葉に、ディアマンテは反射的に下腹部を両手で覆うのを、クラリーチェは見ていた。
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