冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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本編

138.人質

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「兄上。欲に目が眩み、人を人とも思えないは、残念ながら兄上の言葉の意味を全く理解していないようですよ?こんなにお粗末で頭の悪い輩を相手に証拠を掴めず手こずっていたと思うと、腹立たしくなりますね。………あぁ、証拠といえば、船の事故に関しての証拠の話が途中でしたね」

そう言いながら、ラファエロはダンテに目配せをした。
すると、ダンテはその精悍な顔ににやりと笑みを浮かべると、懐から紙切れを二枚取り出した。

「フェラーラ侯爵。証拠の品として、侯爵家から船の細工及び航路の変更についての計画書を拝借いたしました。………それから彼らの家族は既にコルシーニ伯爵家にて保護させて頂きましたので、ご了承下さい」
「…………!」

ずっと落ち着きを払っていたフェラーラ侯爵の表情が、その瞬間に変わった。
赤い目は瞳孔が開き、青白い顔は更に青さが増した。

「………あれは、我が家の使用人です。粗相をしたために地下室に閉じ込めていただけで………決して人質などでは………」
「………ダンテは、としか言っていない。………何故人質などという言葉が出てくるのだ?」

エドアルドの言葉に、自ら墓穴を掘った事に気がついたフェラーラ侯爵は、薄い唇を噛み締めた。

「…………っ、そ………れは………」

辛うじて言葉になったその声は、酷く潰れて聞こえた。

「………まぁ、侯爵………。そんな恐ろしい事をなさる方だっただなんて………」

声を上げたのは、ディアマンテだった。

「貴方は、国の繁栄の為に身を削る、忠臣だと思っておりましたのに…………」

わざとらしい程に深い溜息をつくと、くっきりと描かれた眉を顰めて、悲痛そうな表情を浮べて見せた。

「………ディアマンテの言うとおりだ。そなたこそ真の忠臣であると、私も目を掛けていたというのに………まさか、陛下の命を狙うとは………」

それは、ブラマーニ公爵家が、フェラーラ侯爵を切り捨てた瞬間だった。
全ての罪を、フェラーラ侯爵になすり付け、自分たちだけは助かろうとしているのが丸わかりだった。
あまりの滑稽さに、エドアルドは思わず口元が引きつる。

「………本当に、舐められたものだな。………最初に、私が何も知らないと思っているのかと訊いた時に、大人しく自白していれば寛大な措置をしてやろうと思ったが………あくまで知らぬと言うのだな?」

ふっと吐息をつくと、エドアルドは腕の中のクラリーチェの髪を、一筋手に取ると、口付けを落とした。
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