冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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本編

133.国王の帰還

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「………本当に………?本当にエドアルド様なのですか………?」

涙で視界がぼやけて、エドアルドの顔がよく見えなかった。
唇も戦慄いて、うまく言葉も紡ぐことが出来ない。
たった今、無事を信じていると自分の口から宣言したはずなのに、目の前にエドアルドがいるのが、信じられない気持ちだった。

「ああ、私だ。………愛しいクラリーチェ、辛い思いをさせて、すまなかった」

エドアルドの大きな手が伸びてきて、クラリーチェの体を抱き寄せた。
クラリーチェは張り裂けそうだった胸の中が、みるみる温かいもので満たされていくのを感じる一方で、全身が、エドアルドの存在を確かめたいと叫びを上げているかのように震えていることに気がついた。

「………無事のご帰還、大変嬉しく………存じますっ………。心より、お待ち………申し上げて、おりました………」

きちんと挨拶をしなければならないと思えば思うほど、次々に涙が溢れ出してきて、言葉が嗚咽に呑み込まれていく。
それでも、冷たい金属の鎧に両手を当てて、クラリーチェはその顔に笑顔を浮かべた。

「………参ったな。貴女を泣かせたかった訳ではないのたが………」

耳元で優しくそう囁くと、クラリーチェの額に口付けを落とし、ジュスト達からクラリーチェを隠すかのように深紅のマントで包み込む。

「イチャつきたいというお気持ちは分かりますが、とりあえずあちらのゴミ屑貴族をどうにかなさってからにしてくださいね、兄上」

リリアーナの方に近寄った近衛騎士も兜を取ると、穏やかな笑みを浮べてそう囁いた。

「ラファエロ殿下…………!?」
「王弟殿下………!」

クラリーチェとリリアーナが驚いたように、同時に声を上げた。
戸惑いながら辺りを見回すと、彼ら以外の近衛騎士は、持ち場から動いていない事に気がついた。
つまり、少なくとも近衛騎士の間では初めから示しわせがされていたということだ。

「グロッシ侯爵令嬢。先程の強烈な一撃、お見事でした。………ですが、あなたの手も無事ではないでしょう?………少し、失礼します」

ラファエロはリリアーナの前に跪くと、リリアーナの右手を優しく手に取り、どこからともなく取り出したハンカチで、器用な手付きで腫れ上がった右手に応急処置を施した。
リリアーナは突然の出来事に、固まったまま動かない。

「…………さて、ブラマーニ公爵。これは、どういうことか説明してもらおうか」

ラファエロが立ち上がった事を確認すると、エドアルドは見る者を凍りつかせるような冷たい表情を浮べて、地を這うような低い声で、問い掛けた。
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