冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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本編

131.口撃

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「あら、婚約破棄………ですの?私ももうあなた様と婚約関係を続けるのは不可能だと思っておりましたから、『婚約解消』が正しいのではありませんこと?」

リリアーナは少しも怯まず、余裕すらも伺わせる態度で、ジュストに立ち向かう。

「何だと………?」
「あら、ご存知ないのかしら?一方的に婚約を取り消す場合は婚約破棄ですけれど、双方合意の上ならば、婚約解消になりますの。………尤もその場合は、慰謝料などは請求できませんけれど………まさかブラマーニ公爵家ともなれば、慰謝料など全くアテにしていないでしょうけれどね」

リリアーナの言葉に、ジュストは何も返せずに口ごもった。
元々リリアーナとの婚約は穏健派貴族を牽制するためのもので、リリアーナと結婚する予定は一切無かった。
特殊な性癖を持つジュストの好みの令嬢が見つかり、ブラマーニ公爵家の野望が達成された時点で、婚約破棄を言い渡し、適当な理由をつけて、法外な慰謝料を巻き上げる予定だった。
特に金銭的には困っているわけではないが、グロッシ侯爵家の力を少しでも削いでおこうという意図だったが、リリアーナの一言でそれは見事に封じられてしまった。

「本当でしたら、こちらが慰謝料を請求したいくらいですけれど………」

ほうっと悩ましい溜息をつくと、ギロリとジュストを睨んだ。

「金輪際、クラリーチェ様と私に近づかないとお約束頂けるのならば、大人しく何もせず、婚約解消といたしましょう」

見事としか言いようのない口撃に、クラリーチェは心からリリアーナに尊敬の念を抱いた。

「………こちらが大人しくしていれば、随分と好き勝手な事を言ってくれるじゃない?」

黒い影がゆっくりと、ジュストに歩み寄った。………ディアマンテと、ブラマーニ公爵夫妻だった。

「何て野蛮な娘なのかしら。………あぁ、可哀想なジュスト………」

ジュストの腫れ上がった左頬をブラマーニ公爵夫人がそっと撫でると、その傍らに立った妖艶な笑みを浮かべたディアマンテが、リリアーナに視線を移す。

「躾のなっていない小娘だと思っていたけれど………ここまでだとはね………。全く、嘆かわしいこと。………自分が何をしたのか、分かっているのかしら?」

ディアマンテは侮蔑の眼差しを向けてくるが、リリアーナは素知らぬ顔をしている。

「お兄様、私はジュストの判断を支持致しますわ。このような娘は未来のに相応しくありませんもの」

未来の、国王。
ディアマンテが何気なく発したその言葉が、クラリーチェの怒りに、火をつけた。
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