冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

文字の大きさ
上 下
45 / 265
本編

128.公爵達の目的

しおりを挟む
そのまま引き摺られるように、広間へと連れて行かれると、ジュストの言っていたとおり、大方の貴族が集まっていた。
周囲には、警護にあたる騎士団の姿があったが、いつも目にしている、近衛騎士の甲冑ではない事が、クラリーチェを不安にさせた。

「ジャクウィント女侯爵をお連れいたしました」

クラリーチェの到着を知らしめるように、ジュストが声をあげると、貴族達の視線がクラリーチェへと集中した。

「………ご無事な様子で、安堵致しました」

広間の正面………本来であれはエドアルドが立っている筈の場所にいたのは、ブラマーニ公爵だった。
クラリーチェはジュストにより、その場所まで連れて行かれた。

「…………国を挙げて祝う開港祭の最中に、信じられない事故が起きてしまった」

集まった貴族に向かい、ブラマーニ公爵は語り掛け始めた。

「皆様にお集まり頂いたのは、他でもない。我が国は今、存続の危機に立たされております。何しろ国王陛下とそれに次ぐ地位の王弟殿下が共に事故死され、大勢いたはずの王子方は既に王位継承権を失っておられる。つまり現在………王位は空席だ。………間違いありませんかな、宰相殿?」
「…………はい」

訊ねられたカンチェラーラ侯爵は、苦虫を噛み潰したような表情で、答えた。

「…………王位を継承する者が途絶えるなど、前代未聞の出来事です。しかし、我々はこの難局を、乗り越えていかなければならない………この国を守るために」

心底国の行く末を心配しているかのように、ブラマーニ公爵は絶望に打ちひしがれた様子を見せた。

「…………そう言えば、ブラマーニ公爵の母上は、先代国王の王姉でいらっしゃいましたね?」

唐突に、フェラーラ侯爵が声を上げた。

「ああ、それが何か?」

素知らぬ顔で、ブラマーニ公爵は訊ねる。

「それに、ブラマーニ公爵家の初代は……数代前の王子ではありませんでしたか?」
「その通りだが………」

するとフェラーラ侯爵がにやりと嗤った。

「現在の我が国の法に則れば、王位継承権は、より王族の血が濃い者へと継承される運びとなります。現在国内において、最も王族の血が濃いのは、ブラマーニ公爵とお見受けしますが…………?」

広間が、大きくざわめいた。
その様子を、クラリーチェはどこか冷めた目で見つめている。
クラリーチェの考えていた、最悪のシナリオが現実となりつつあった。

ブラマーニ公爵達の目的は………王位簒奪。
クラリーチェは、乱れそうになる呼吸を落ち着かせるように、ドレスの裾をぎゅっと握りしめた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結】西の辺境伯令嬢は、東の辺境伯へと嫁ぐ

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:156pt お気に入り:1,563

皇后陛下の御心のままに

恋愛 / 完結 24h.ポイント:71pt お気に入り:539

華麗に離縁してみせますわ!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:781pt お気に入り:14,161

うたた寝している間に運命が変わりました。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:298pt お気に入り:9,595

お妃候補に興味はないのですが…なぜか辞退する事が出来ません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:781pt お気に入り:3,097

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。