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本編
128.公爵達の目的
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そのまま引き摺られるように、広間へと連れて行かれると、ジュストの言っていたとおり、大方の貴族が集まっていた。
周囲には、警護にあたる騎士団の姿があったが、いつも目にしている、近衛騎士の甲冑ではない事が、クラリーチェを不安にさせた。
「ジャクウィント女侯爵をお連れいたしました」
クラリーチェの到着を知らしめるように、ジュストが声をあげると、貴族達の視線がクラリーチェへと集中した。
「………ご無事な様子で、安堵致しました」
広間の正面………本来であれはエドアルドが立っている筈の場所にいたのは、ブラマーニ公爵だった。
クラリーチェはジュストにより、その場所まで連れて行かれた。
「…………国を挙げて祝う開港祭の最中に、信じられない事故が起きてしまった」
集まった貴族に向かい、ブラマーニ公爵は語り掛け始めた。
「皆様にお集まり頂いたのは、他でもない。我が国は今、存続の危機に立たされております。何しろ国王陛下とそれに次ぐ地位の王弟殿下が共に事故死され、大勢いたはずの王子方は既に王位継承権を失っておられる。つまり現在………王位は空席だ。………間違いありませんかな、宰相殿?」
「…………はい」
訊ねられたカンチェラーラ侯爵は、苦虫を噛み潰したような表情で、答えた。
「…………王位を継承する者が途絶えるなど、前代未聞の出来事です。しかし、我々はこの難局を、乗り越えていかなければならない………この国を守るために」
心底国の行く末を心配しているかのように、ブラマーニ公爵は絶望に打ちひしがれた様子を見せた。
「…………そう言えば、ブラマーニ公爵の母上は、先代国王の王姉でいらっしゃいましたね?」
唐突に、フェラーラ侯爵が声を上げた。
「ああ、それが何か?」
素知らぬ顔で、ブラマーニ公爵は訊ねる。
「それに、ブラマーニ公爵家の初代は……数代前の王子ではありませんでしたか?」
「その通りだが………」
するとフェラーラ侯爵がにやりと嗤った。
「現在の我が国の法に則れば、王位継承権は、より王族の血が濃い者へと継承される運びとなります。現在国内において、最も王族の血が濃いのは、ブラマーニ公爵とお見受けしますが…………?」
広間が、大きくざわめいた。
その様子を、クラリーチェはどこか冷めた目で見つめている。
クラリーチェの考えていた、最悪のシナリオが現実となりつつあった。
ブラマーニ公爵達の目的は………王位簒奪。
クラリーチェは、乱れそうになる呼吸を落ち着かせるように、ドレスの裾をぎゅっと握りしめた。
周囲には、警護にあたる騎士団の姿があったが、いつも目にしている、近衛騎士の甲冑ではない事が、クラリーチェを不安にさせた。
「ジャクウィント女侯爵をお連れいたしました」
クラリーチェの到着を知らしめるように、ジュストが声をあげると、貴族達の視線がクラリーチェへと集中した。
「………ご無事な様子で、安堵致しました」
広間の正面………本来であれはエドアルドが立っている筈の場所にいたのは、ブラマーニ公爵だった。
クラリーチェはジュストにより、その場所まで連れて行かれた。
「…………国を挙げて祝う開港祭の最中に、信じられない事故が起きてしまった」
集まった貴族に向かい、ブラマーニ公爵は語り掛け始めた。
「皆様にお集まり頂いたのは、他でもない。我が国は今、存続の危機に立たされております。何しろ国王陛下とそれに次ぐ地位の王弟殿下が共に事故死され、大勢いたはずの王子方は既に王位継承権を失っておられる。つまり現在………王位は空席だ。………間違いありませんかな、宰相殿?」
「…………はい」
訊ねられたカンチェラーラ侯爵は、苦虫を噛み潰したような表情で、答えた。
「…………王位を継承する者が途絶えるなど、前代未聞の出来事です。しかし、我々はこの難局を、乗り越えていかなければならない………この国を守るために」
心底国の行く末を心配しているかのように、ブラマーニ公爵は絶望に打ちひしがれた様子を見せた。
「…………そう言えば、ブラマーニ公爵の母上は、先代国王の王姉でいらっしゃいましたね?」
唐突に、フェラーラ侯爵が声を上げた。
「ああ、それが何か?」
素知らぬ顔で、ブラマーニ公爵は訊ねる。
「それに、ブラマーニ公爵家の初代は……数代前の王子ではありませんでしたか?」
「その通りだが………」
するとフェラーラ侯爵がにやりと嗤った。
「現在の我が国の法に則れば、王位継承権は、より王族の血が濃い者へと継承される運びとなります。現在国内において、最も王族の血が濃いのは、ブラマーニ公爵とお見受けしますが…………?」
広間が、大きくざわめいた。
その様子を、クラリーチェはどこか冷めた目で見つめている。
クラリーチェの考えていた、最悪のシナリオが現実となりつつあった。
ブラマーニ公爵達の目的は………王位簒奪。
クラリーチェは、乱れそうになる呼吸を落ち着かせるように、ドレスの裾をぎゅっと握りしめた。
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