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本編
121.宣戦布告
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「クラリーチェ様!」
少しして、リリアーナがやってきた。
リリアーナは薄いピンクと赤を組み合わせた可愛らしいドレスだった。ストロベリーブロンドの髪はふんわりと下ろしていて、彼女を魅力的に見せていた。
「先程、あの男に絡まれておりましたでしょう?大丈夫でしたか?」
「え………、ええ」
リリアーナは勢いよくクラリーチェに近づくと、ぎゅっと手を握った。
「手出しされなくて、本当に良かったですわ。クラリーチェ様はいつ見てもお美しいですけれど、今日のお美しさはまた格別ですもの。この場にいる全員が、一瞬でクラリーチェ様に心奪われてしまいましたわ。………そうですわよね、陛下?」
嫋やかな笑みを浮かべながら、リリアーナはうっとりとクラリーチェを見つめる。
突然話を振られたエドアルドは戸惑いながらも頷いた。
実際、開港祭に集まった人々はクラリーチェに見惚れていた。
中には、魂を抜かれたようになった若い男性が何人もいるのを、エドアルドはしっかりと確認していた。
よもや、国王の婚約者に横恋慕してくるような命知らずの愚者はジュストくらいだろうが、それでもエドアルドの心は穏やかではいられなかった。
「リリアーナ様こそ、花の妖精かと思うくらいくらいに素敵ですわ」
「まあ。クラリーチェ様からお褒めの言葉をいただけるだなんて光栄です」
二人が楽しそうにお互いを褒めあっていると、そこに声を掛けてきた人物がいた。
「お二人共、楽しそうねぇ」
はっとして、声の方を振り返ると、ディアマンテと、ブラマーニ公爵夫妻、そしてフェラーラ侯爵夫妻が立っていた。
「………あら、陛下。お久しぶりでございますわね」
血のように真っ赤な唇の端を釣り上げたディアマンテがちらりとエドアルドを見た。
その様子は敬いとはかけ離れたものに感じられる。
「………息災で、何よりです」
血縁関係がないとはいえ、継母に向けたものとはおよそ思えないような冷たい声を投げかける。
そんなエドアルドを面白くなさそうに一瞥すると、ディアマンテの視線はクラリーチェへと向けられた。
「あら、クラリーチェ様の側に控えている侍女方は今日はいらっしゃらないのねぇ?」
紫暗色の瞳を僅かに細めて、ディアマンテは探るようにそう呟いた。
「本日は、所用がございまして………」
「まあ、体調でも崩されたのかしら?クラリーチェ様もお忙しい身でしょうから、お気をつけ遊ばせ?」
ディアマンテの言葉に、一瞬クラリーチェは瞠目したが、悟られないようにすぐに笑顔を取り繕う。
それは、エドアルドやラファエロ達も同様だった。
その様子を見て、ディアマンテは再び微笑みを浮かべると、黒い扇子を広げて口元を隠した。
「それにしても、今日は絶好の祭り日和ですな」
「波も穏やかですし、お天気も良いですものね」
ブラマーニ公爵夫妻が、殺伐とした雰囲気を無視して話しかける。
「この分だと、今年の開港祭はさぞかし盛り上がることでしょうね。………事故などなく、全てが滞りなく終わることをお祈りしております」
フェラーラ侯爵が、意味深な笑顔を浮かべながら、静かにそう呟いた。
その言葉は何故か、宣戦布告のようにクラリーチェの耳には聞こえたのだった。
少しして、リリアーナがやってきた。
リリアーナは薄いピンクと赤を組み合わせた可愛らしいドレスだった。ストロベリーブロンドの髪はふんわりと下ろしていて、彼女を魅力的に見せていた。
「先程、あの男に絡まれておりましたでしょう?大丈夫でしたか?」
「え………、ええ」
リリアーナは勢いよくクラリーチェに近づくと、ぎゅっと手を握った。
「手出しされなくて、本当に良かったですわ。クラリーチェ様はいつ見てもお美しいですけれど、今日のお美しさはまた格別ですもの。この場にいる全員が、一瞬でクラリーチェ様に心奪われてしまいましたわ。………そうですわよね、陛下?」
嫋やかな笑みを浮かべながら、リリアーナはうっとりとクラリーチェを見つめる。
突然話を振られたエドアルドは戸惑いながらも頷いた。
実際、開港祭に集まった人々はクラリーチェに見惚れていた。
中には、魂を抜かれたようになった若い男性が何人もいるのを、エドアルドはしっかりと確認していた。
よもや、国王の婚約者に横恋慕してくるような命知らずの愚者はジュストくらいだろうが、それでもエドアルドの心は穏やかではいられなかった。
「リリアーナ様こそ、花の妖精かと思うくらいくらいに素敵ですわ」
「まあ。クラリーチェ様からお褒めの言葉をいただけるだなんて光栄です」
二人が楽しそうにお互いを褒めあっていると、そこに声を掛けてきた人物がいた。
「お二人共、楽しそうねぇ」
はっとして、声の方を振り返ると、ディアマンテと、ブラマーニ公爵夫妻、そしてフェラーラ侯爵夫妻が立っていた。
「………あら、陛下。お久しぶりでございますわね」
血のように真っ赤な唇の端を釣り上げたディアマンテがちらりとエドアルドを見た。
その様子は敬いとはかけ離れたものに感じられる。
「………息災で、何よりです」
血縁関係がないとはいえ、継母に向けたものとはおよそ思えないような冷たい声を投げかける。
そんなエドアルドを面白くなさそうに一瞥すると、ディアマンテの視線はクラリーチェへと向けられた。
「あら、クラリーチェ様の側に控えている侍女方は今日はいらっしゃらないのねぇ?」
紫暗色の瞳を僅かに細めて、ディアマンテは探るようにそう呟いた。
「本日は、所用がございまして………」
「まあ、体調でも崩されたのかしら?クラリーチェ様もお忙しい身でしょうから、お気をつけ遊ばせ?」
ディアマンテの言葉に、一瞬クラリーチェは瞠目したが、悟られないようにすぐに笑顔を取り繕う。
それは、エドアルドやラファエロ達も同様だった。
その様子を見て、ディアマンテは再び微笑みを浮かべると、黒い扇子を広げて口元を隠した。
「それにしても、今日は絶好の祭り日和ですな」
「波も穏やかですし、お天気も良いですものね」
ブラマーニ公爵夫妻が、殺伐とした雰囲気を無視して話しかける。
「この分だと、今年の開港祭はさぞかし盛り上がることでしょうね。………事故などなく、全てが滞りなく終わることをお祈りしております」
フェラーラ侯爵が、意味深な笑顔を浮かべながら、静かにそう呟いた。
その言葉は何故か、宣戦布告のようにクラリーチェの耳には聞こえたのだった。
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