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本編
118.異変
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開港祭の朝は早い。
クラリーチェも日が昇る前から起きて支度を始めた。
この日のために、エドアルドがドレスをプレゼントしてくれた。
それは、光沢のある水色の布地にに金糸で全面に繊細な刺繍が施されている。刺繍の柄はまるでレースを重ねたように見える美しいデザインで、ふんわりと膨らんだスカートが華奢なクラリーチェの腰の細さを強調させ、優美さを際立たせてくれるていた。
それに合わせるのは、デビュタントの時に作った金とアクアマリンのティアラ、それにブルーダイヤモンドのイヤリングとネックレスだ。
指にはエドアルドの送った指輪がしっかりと嵌っている。
銀色の髪は丁寧に編み込まれ、あちこちに水色と黄色の花が飾られた。
「やはり私には派手な気がするのだけれど………」
「………開港祭ですから、このくらい普通ですよ」
「………リディア?調子が悪いのですか?」
ふと、化粧の仕上げをしてくれているリディアの様子がおかしい事に、クラリーチェは気がついた。
「大丈夫です。ご心配には……およびません」
心なしかリディアの顔が赤い気もするし、淡々とした口調も、鈍さがある。
「少し、休んでいたほうがいいわ。無理は良くないもの」
「しかし………」
「これだけの人数がいれば、支度は問題ないでしょう?それに、護衛も今日は特に厳重でしょうから、心配ないわ」
クラリーチェはそう言って微笑んでみせた。
本当はリディアがついていてくれれば安心だけれど、彼女は文字通り朝から晩までクラリーチェの為に動いてくれている。
無理をさせ過ぎたのだろうかと、クラリーチェは不安になった。
その時、リディアの顔が苦しそうに歪んだ。
「………誰か、お医者様を呼んできて頂戴!」
クラリーチェが慌てて指示を出すと、侍女が一人慌てて部屋を出ていく。
「リディアをそちらのソファに寝かせましょう、手伝ってくれるかしら?」
残った侍女達が慌ててリディアに駆け寄ってきた。
「だい………じょうぶ、です………」
「どこからどう見ても、大丈夫なようには見えないわ。………いつから我慢していたのです?」
リディアに触れた瞬間、熱いと感じるくらいには熱があるようだ。
いくら王の影を務めているとあっても、彼女とて生身の人間だ。無理をすれば体調だって崩すだろう。
(………でも、開港祭に合わせたかのように体調を崩すだなんて………まさか、よね)
嫌な予感が一瞬頭を過ぎったが、リディアは毒への耐性もあるし、知識も深い為、彼女に害をなすのは無理があるだろう。
クラリーチェはリディアの額に浮かぶ脂汗を見つめながら、その予感を振り払うかのように、ぎゅっと目を瞑ったのだった。
クラリーチェも日が昇る前から起きて支度を始めた。
この日のために、エドアルドがドレスをプレゼントしてくれた。
それは、光沢のある水色の布地にに金糸で全面に繊細な刺繍が施されている。刺繍の柄はまるでレースを重ねたように見える美しいデザインで、ふんわりと膨らんだスカートが華奢なクラリーチェの腰の細さを強調させ、優美さを際立たせてくれるていた。
それに合わせるのは、デビュタントの時に作った金とアクアマリンのティアラ、それにブルーダイヤモンドのイヤリングとネックレスだ。
指にはエドアルドの送った指輪がしっかりと嵌っている。
銀色の髪は丁寧に編み込まれ、あちこちに水色と黄色の花が飾られた。
「やはり私には派手な気がするのだけれど………」
「………開港祭ですから、このくらい普通ですよ」
「………リディア?調子が悪いのですか?」
ふと、化粧の仕上げをしてくれているリディアの様子がおかしい事に、クラリーチェは気がついた。
「大丈夫です。ご心配には……およびません」
心なしかリディアの顔が赤い気もするし、淡々とした口調も、鈍さがある。
「少し、休んでいたほうがいいわ。無理は良くないもの」
「しかし………」
「これだけの人数がいれば、支度は問題ないでしょう?それに、護衛も今日は特に厳重でしょうから、心配ないわ」
クラリーチェはそう言って微笑んでみせた。
本当はリディアがついていてくれれば安心だけれど、彼女は文字通り朝から晩までクラリーチェの為に動いてくれている。
無理をさせ過ぎたのだろうかと、クラリーチェは不安になった。
その時、リディアの顔が苦しそうに歪んだ。
「………誰か、お医者様を呼んできて頂戴!」
クラリーチェが慌てて指示を出すと、侍女が一人慌てて部屋を出ていく。
「リディアをそちらのソファに寝かせましょう、手伝ってくれるかしら?」
残った侍女達が慌ててリディアに駆け寄ってきた。
「だい………じょうぶ、です………」
「どこからどう見ても、大丈夫なようには見えないわ。………いつから我慢していたのです?」
リディアに触れた瞬間、熱いと感じるくらいには熱があるようだ。
いくら王の影を務めているとあっても、彼女とて生身の人間だ。無理をすれば体調だって崩すだろう。
(………でも、開港祭に合わせたかのように体調を崩すだなんて………まさか、よね)
嫌な予感が一瞬頭を過ぎったが、リディアは毒への耐性もあるし、知識も深い為、彼女に害をなすのは無理があるだろう。
クラリーチェはリディアの額に浮かぶ脂汗を見つめながら、その予感を振り払うかのように、ぎゅっと目を瞑ったのだった。
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