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本編
116.開港祭
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「もうすぐ開港祭だ」
開港祭。それはキエザ国民が心待ちにしている祭典だ。
キエザ発展の礎になったキエザ港が開港された記念日で、恵みをもたらす豊かな海を与えて下さった神への感謝とキエザのさらなる発展をを願う意味が込められた、豊饒祭や聖夜祭に並ぶ、キエザの大切な祝日となっている。
この日は全国民が着飾り、港に浮かべられた派手に飾り付けがなされた祝祭船やゴンドラ船に乗って近海を周遊するのが習わしだ。
そして、祭りのクライマックスにはキエザと海との関係が永遠の蜜月であるようにという願いを込めて、国王が指輪と花冠を海に投げ入れることから『海との結婚』とも呼ばれている。
「私………恥ずかしながら、開港祭に一度も参加したことがないのです………」
クラリーチェは消え入りそうなほど小さな声で呟いた。
成人するまでの間に一度も開港祭に参加したことがないなどという国民は、おそらくいないだろう。
「……………一度も、参加したことがない………?」
案の定、エドアルドは一瞬目を丸くした。そして一瞬の後、怒りに顔を歪ませた。
「………あの女………どこまでもクラリーチェを虐げていたのだな………!やはりもっと苦しめてやるべきだったか………!」
クラリーチェは失言だったと気がついたが、もはや取り消しようがない。
「あの………、違うのです………!あ、いえ………違わないのですけれど………、私、晴れ着など持っていませんから、他の方に不愉快な思いをさせてしまうと思って………あ、でも家で留守番をしていても雰囲気は味わえましたから………」
エドアルドの怒りように、困ったような表情を浮かべながら懸命に言い訳をするクラリーチェを、エドアルドは抱きしめた。
「記念すべき初の開港祭を存分に味わってほしいところだが…………。そういう訳にもいかないのだ」
「もしかして…………、ブラマーニ公爵達に何か仕掛けるのですか?」
クラリーチェの言葉に、エドアルドは頷いた。
「おそらくあちらも、何かしらを仕掛けてくるだろう。それを敢えて利用し、奴らを一網打尽にするのが目標だ。………今、動向を探らせているが、もしものときは貴女の知恵を貸りるかもしれない」
「でも、せっかくのお祝い事ですのに………」
エドアルドの腕の中で、クラリーチェは少し悲しそうに俯いた。
全国民か心待ちにしている日を、断罪に利用するのは気が引けたからだった。
「祝いだからこそ、憂いは取り除かなければならない。国の為に………そして、私達の未来のために」
エドアルドの腕に力が込められて、クラリーチェは目を閉じて、その温もりを感じるのだった。
開港祭。それはキエザ国民が心待ちにしている祭典だ。
キエザ発展の礎になったキエザ港が開港された記念日で、恵みをもたらす豊かな海を与えて下さった神への感謝とキエザのさらなる発展をを願う意味が込められた、豊饒祭や聖夜祭に並ぶ、キエザの大切な祝日となっている。
この日は全国民が着飾り、港に浮かべられた派手に飾り付けがなされた祝祭船やゴンドラ船に乗って近海を周遊するのが習わしだ。
そして、祭りのクライマックスにはキエザと海との関係が永遠の蜜月であるようにという願いを込めて、国王が指輪と花冠を海に投げ入れることから『海との結婚』とも呼ばれている。
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「………あの女………どこまでもクラリーチェを虐げていたのだな………!やはりもっと苦しめてやるべきだったか………!」
クラリーチェは失言だったと気がついたが、もはや取り消しようがない。
「あの………、違うのです………!あ、いえ………違わないのですけれど………、私、晴れ着など持っていませんから、他の方に不愉快な思いをさせてしまうと思って………あ、でも家で留守番をしていても雰囲気は味わえましたから………」
エドアルドの怒りように、困ったような表情を浮かべながら懸命に言い訳をするクラリーチェを、エドアルドは抱きしめた。
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エドアルドの腕に力が込められて、クラリーチェは目を閉じて、その温もりを感じるのだった。
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