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本編
閑話 欲求不満?(SIDE:ラファエロ) ※読まなくても本編に影響ありません
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「兄上、最近クラリーチェ嬢へのスキンシップが激しすぎませんか?」
クラリーチェが部屋に戻った後、ラファエロが徐に口を開く。
「婚約者同士なのだから別に構わんだろう。それにクラリーチェも特段嫌がっていない」
エドアルドは平然と言ってのけた。
「それはそうですけれど、何というか………もう少し人目を気にするというか、節度を守るという事を覚えたほうが良いのではないでしょうかという事を申し上げているだけです」
「………私にこれ以上我慢しろと言うのか?」
「………我慢?」
返された答えに、ラファエロは唖然とする。
クラリーチェが執務室にいる間はずっと自分の膝に載せたり、手を握ったり、抱きしめたりしているエドアルドの行動のどこが我慢しているというのか、ラファエロは甚だ疑問だった。
「本当なら、片時も離れたくないというのに、執務に追われて、顔を合わせて食事を摂ることさえままならないではないか。だからせめて一緒に過ごす時くらいは全身でクラリーチェの存在を感じていたいというこの気持ちまで我慢しろと?」
早口で捲し立てるエドアルドに、ラファエロは大きく溜息をついた。
「………せめて執務中は謹んで下さい。見ているこちらが恥ずかしくなります」
二人の想いが通じる前は、うじうじと思い悩むばかりで中々行動しないことに焦れていたが、想いが通じたら通じたで、今度は積極的過ぎて面倒くさいと感じてしまう。
「………何だ、羨ましいのか?だがいくらお前といえども、クラリーチェには指一本触れされるつもりはないぞ」
「なっ…………!」
思いもよらぬエドアルドからの言葉に、ラファエロは思わず立ち上がった。
「それとも欲求不満か?………まあお前も年頃だからな」
「欲求不満………?!」
「気になる令嬢は、いないのか?何ならこの兄が協力するぞ」
恋愛偏差値が異様に低かったエドアルドに、こうまで上から目線で恋愛について言われるのは心外だった。
兄のために、どれだけ自分が苦労させられたと思っているのだろうか。
「………万が一そのような相手がいても、私は自分で何とか致しますので大丈夫です」
冷静にならなければと思えば思うほどに表情が憮然としたものに変わってしまう自分に、ラファエロは気がついた。
これではまるで図星を指されて不貞腐れているようではないか。
それが更に面白くなくて、ラファエロは無言のまま執務室を後にした。
もやもやと胸で渦巻くこの気持ちは何なのだろうと考えると、苛立ちは募っていく。
「………本当に、欲求不満ですかね………」
悩めるラファエロ青年は、もう一度大きく溜息をつくと、足早に自室に戻っていく。
………この時の彼は数週間後に自分を待ち受けている運命など、知る由もないのだった。
クラリーチェが部屋に戻った後、ラファエロが徐に口を開く。
「婚約者同士なのだから別に構わんだろう。それにクラリーチェも特段嫌がっていない」
エドアルドは平然と言ってのけた。
「それはそうですけれど、何というか………もう少し人目を気にするというか、節度を守るという事を覚えたほうが良いのではないでしょうかという事を申し上げているだけです」
「………私にこれ以上我慢しろと言うのか?」
「………我慢?」
返された答えに、ラファエロは唖然とする。
クラリーチェが執務室にいる間はずっと自分の膝に載せたり、手を握ったり、抱きしめたりしているエドアルドの行動のどこが我慢しているというのか、ラファエロは甚だ疑問だった。
「本当なら、片時も離れたくないというのに、執務に追われて、顔を合わせて食事を摂ることさえままならないではないか。だからせめて一緒に過ごす時くらいは全身でクラリーチェの存在を感じていたいというこの気持ちまで我慢しろと?」
早口で捲し立てるエドアルドに、ラファエロは大きく溜息をついた。
「………せめて執務中は謹んで下さい。見ているこちらが恥ずかしくなります」
二人の想いが通じる前は、うじうじと思い悩むばかりで中々行動しないことに焦れていたが、想いが通じたら通じたで、今度は積極的過ぎて面倒くさいと感じてしまう。
「………何だ、羨ましいのか?だがいくらお前といえども、クラリーチェには指一本触れされるつもりはないぞ」
「なっ…………!」
思いもよらぬエドアルドからの言葉に、ラファエロは思わず立ち上がった。
「それとも欲求不満か?………まあお前も年頃だからな」
「欲求不満………?!」
「気になる令嬢は、いないのか?何ならこの兄が協力するぞ」
恋愛偏差値が異様に低かったエドアルドに、こうまで上から目線で恋愛について言われるのは心外だった。
兄のために、どれだけ自分が苦労させられたと思っているのだろうか。
「………万が一そのような相手がいても、私は自分で何とか致しますので大丈夫です」
冷静にならなければと思えば思うほどに表情が憮然としたものに変わってしまう自分に、ラファエロは気がついた。
これではまるで図星を指されて不貞腐れているようではないか。
それが更に面白くなくて、ラファエロは無言のまま執務室を後にした。
もやもやと胸で渦巻くこの気持ちは何なのだろうと考えると、苛立ちは募っていく。
「………本当に、欲求不満ですかね………」
悩めるラファエロ青年は、もう一度大きく溜息をつくと、足早に自室に戻っていく。
………この時の彼は数週間後に自分を待ち受けている運命など、知る由もないのだった。
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