冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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本編

115.呪いの真相(3)

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「つまりブラマーニ公爵は、入手が難しくなったソーニョアルジェントを自ら作り出そうと、そう考えたということですね?」
「ああ。ダンテによると、あの毒は鉱毒に似ている部分があるという。鉱物はブラマーニ公爵領の特産品だからな。そこで製造されていると言われても、何ら不思議ではない。何しろ原料は腐るほどあるのだからな」

王の影を務めるコルシーニ伯爵家は毒の知識も豊富だが、それでも詳しい事が分からないのだからおそらくは複雑な工程を経て作られるものなのだろう。
ダンテの見立てが正しければ、ブラマーニ公爵家は更に窮地に立たされるだろう。………何しろ国内で鉱物の算出があるのはブラマーニ公爵領のみなのだから。

「加えてそれを裏付ける証拠まで、ジャクウィント家は揃えてくださってましてね………。一部の鉱山の労働者や周辺の領民、それに馬や牛が相次いで亡くなっているという報告書の写しです。………そして、ガラス瓶と共に入っていた布切れは、あの瓶を開ける際に直接触れないようにするためのものですが………そこにはブラマーニ公爵家の紋章であるルピナスの刺繍がありました。こうして外部に漏れることを想定していなかったのでしょうが迂闊ですよね。見つけたときは笑ってしまいましたが………これを入手した人物は相当な苦労をしたに違いありません」

クラリーチェは驚いた。
各家の紋章はその家の持ち物であることを表すもの。よほど大切なものでなければ紋章は入れない。つまり、ブラマーニ公爵はそれが自らの持ち物だと認めたようなものだ。
そんな証拠をどうやって手にしたのかを確かめる術はもうないが、父や祖父、そしてそれに連なる人たちは自分の命が危険に晒されるのを分かっていながらも、何とかしてブラマーニ公爵らの陰謀を止めようとしていたのだろう。
その覚悟を感じ取り、同時に父にあらぬ疑いをかけた自分自身を恥じた。
そんなクラリーチェを励ますように、エドアルドはクラリーチェの冷たい手を握る。

「………結局ジャクウィント侯爵一族の死は、全てに不審な点があるにも関わらず事故と断定されていたとなると、誰もそれを呪いなどとは言わないだろう。それに、ジャクウィント侯爵家の事件に関する書物が、全て無くなっている事も確認している。………事件に関する記録を闇に葬り去ろうという人間の仕業だろう。情報操作は上手くやっていたようだ。………だが、そんなことがいつまでもまかり通ると思われているのは、許しがたいな」
「………証拠も揃ってきましたし、そろそろこちらから仕掛けますか?」

ラファエロの問いかけに、エドアルドは不敵に笑った。
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