冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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本編

114.呪いの真相(2)

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「正式な医師であるという裏付けも取れておりますので、この証拠はかなり我々には有利になると思います。………何しろ、銀の夢ソーニョアルジェントが使われた可能性を示唆してあるのですからね」

その言葉に、クラリーチェは無意識のうちにエドアルドの腕にしがみついた。
とてつもなく恐ろしい毒だということ以外、それが何なのか、クラリーチェは知らない。
あれから、ソーニョアルジェントについてどこかに記述がないものかと懸命に探したが、全く見つからなかった。

「溺死だとすると、飲み込んだ海水の量が少なすぎること、気道には殆ど水が入り込んでおらず、代わりに四肢への紫斑の出現が認められたこと………それが、ソーニョアルジェントによる反応だったのではないかという内容が書かれています」

ラファエロが恐ろしい事実を淡々と説明していくのを聞きながら、クラリーチェは強い疑問を感じた。

「それだけの証言や証拠がありながら、何故事故死ということになってしまったのでしょうか」
「………ソーニョアルジェントはこれだけ有名な毒でありながら、詳しい製法も、解毒方法も分かっていない。勿論、それを検出することも出来ていない。つまりは仮にあの毒が使われていたとしても、立証が出来なかったこともあり、それ以上の詮索は不要と判断された。ジャクウィント侯爵は引き続きの原因究明を、治安維持を取り仕切っていた当時のフェラーラ侯爵に嘆願したが断られたことがこちらの手紙のやり取りから分かった。………結局揉み消されたということだ」

暫く黙って聞いていたエドアルドが憮然とした表情でクラリーチェの疑問に答えた。

「………でも、立証することが出来ないのであれば、証拠の手紙や帳簿があったとしても同じ事では………?」
「確かにそのとおりだ。しかし、貴女の一族はそれを実証する為に動いていたようだ。………どうやって入手したのかは分からないが、ブラマーニ公爵家がイズヴェルカ王国から薬師を呼び寄せて自領に住まわせているという公爵領の記録があった。………元々この毒薬がイズヴェルカ王国で作られていたものだ。だがそれを政治利用しようという動きがあった為に私の祖父……先々代国王がイズヴェルカとの薬及び食品の取引を全面的に禁止した。それがちょうど三十年前の事だ」

その禁止令ならクラリーチェも知っていた。
イズヴェルカ王国はキエザより西方に位置する国だが、気候や地理的要因が似ているせいか、特産物に珍しいものはない。
禁止令が発布された理由は国内の産業保護のためとされていたが、腑に落ちなかったのを覚えがあった。
その裏に隠されていた事実は、クラリーチェの心に重くのしかかった。
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