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本編
110.箱
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「ここの床板の軋みが、不自然なのです。こうして、体重をかけるとこの部分だけが軋むのは、この下になにかあるのではないかと………」
クラリーチェはしゃがみ込むと、板をそっと撫でる。
そして、板と板の間に、僅かに隙間があるのを見つけた。
「ダンテ様、ここの部分に僅かな隙間があるのですが、外すことは出来ませんか?」
ダンテはクラリーチェが指し示した部分を目を凝らして見てみるが、隙間と言えるほど隙間がない。
だが、手をかざしてみると僅かだが風の流れを感じることが出来た。
大きくはないが、意図的に作られた空間があるとダンテは確信した。
「………承知致しました。少しお下がり頂けますか?」
ダンテが騎士服の中からナイフを取り出し、床板の隙間に差し込むと、床板が浮き上がる。
こくり、とクラリーチェは小さく喉を鳴らした。
床板が外されると、そこには厳重に封がされた古い箱が納められていた。
「あの僅かな軋みに、よく気が付かれましたね。普段から神経を研ぎ澄ましている我々でも気が付かなかったというのに…………」
ダンテが心底驚いたように溜息をついた。
あの気難しい妹が入れ込むのが分かるような気がして、思わず笑みを零す。
「実は、床に物を隠すのは私にも経験があるのです」
クラリーチェははにかんだ笑顔を浮かべると、そう呟いた。
「実はお恥ずかしい話なのですが………幼い頃から、私が大切にしている物は全て取り上げられてしまいましたから、見つからないようにと与えられた部屋の床板を外して、そこに隠すようにしていたのです」
伯母や、デボラから宝物を守る為に考えた手段だったが、結局はクラリーチェの部屋に押し入ったデボラが板を踏み抜いてしまい、隠せなくなった苦い思い出があった。
ただその時に、きちんと固定されていない床板は軋むのだという事を学んだのだった。………まさかそれがこんな形で役に立つとは思いもしなかったが。
「………中身を、確認してみましょう」
箱を取り出し、改めて見てみると、重力感のある立派な物で、鍵も掛けられていた。
降り積もった埃を手で払うと、リディアはその箱を品定めするかのように観察する。
「この程度の鍵なら、すぐに開けられます」
リディアは髪を留めていた髪飾りを一本抜き取ると、鍵穴へと差し込む。暫くすると、微かな音がした。
遥か遠く、東国の島国に『シノビ』といって、様々な妖術を使う隠密集団がいると本で読んだことがあったが、コルシーニ家の人間はその親族ではないかとクラリーチェは密かに思った。
箱に異常が無いことを確認すると、リディアはその蓋にゆっくりと手を掛けた。
クラリーチェはしゃがみ込むと、板をそっと撫でる。
そして、板と板の間に、僅かに隙間があるのを見つけた。
「ダンテ様、ここの部分に僅かな隙間があるのですが、外すことは出来ませんか?」
ダンテはクラリーチェが指し示した部分を目を凝らして見てみるが、隙間と言えるほど隙間がない。
だが、手をかざしてみると僅かだが風の流れを感じることが出来た。
大きくはないが、意図的に作られた空間があるとダンテは確信した。
「………承知致しました。少しお下がり頂けますか?」
ダンテが騎士服の中からナイフを取り出し、床板の隙間に差し込むと、床板が浮き上がる。
こくり、とクラリーチェは小さく喉を鳴らした。
床板が外されると、そこには厳重に封がされた古い箱が納められていた。
「あの僅かな軋みに、よく気が付かれましたね。普段から神経を研ぎ澄ましている我々でも気が付かなかったというのに…………」
ダンテが心底驚いたように溜息をついた。
あの気難しい妹が入れ込むのが分かるような気がして、思わず笑みを零す。
「実は、床に物を隠すのは私にも経験があるのです」
クラリーチェははにかんだ笑顔を浮かべると、そう呟いた。
「実はお恥ずかしい話なのですが………幼い頃から、私が大切にしている物は全て取り上げられてしまいましたから、見つからないようにと与えられた部屋の床板を外して、そこに隠すようにしていたのです」
伯母や、デボラから宝物を守る為に考えた手段だったが、結局はクラリーチェの部屋に押し入ったデボラが板を踏み抜いてしまい、隠せなくなった苦い思い出があった。
ただその時に、きちんと固定されていない床板は軋むのだという事を学んだのだった。………まさかそれがこんな形で役に立つとは思いもしなかったが。
「………中身を、確認してみましょう」
箱を取り出し、改めて見てみると、重力感のある立派な物で、鍵も掛けられていた。
降り積もった埃を手で払うと、リディアはその箱を品定めするかのように観察する。
「この程度の鍵なら、すぐに開けられます」
リディアは髪を留めていた髪飾りを一本抜き取ると、鍵穴へと差し込む。暫くすると、微かな音がした。
遥か遠く、東国の島国に『シノビ』といって、様々な妖術を使う隠密集団がいると本で読んだことがあったが、コルシーニ家の人間はその親族ではないかとクラリーチェは密かに思った。
箱に異常が無いことを確認すると、リディアはその蓋にゆっくりと手を掛けた。
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