23 / 268
本編
106.鍵
しおりを挟む
「証拠………とは、私の両親が………ジャクウィント家が呪われているという噂の、真実を知るためのものですか………?」
今度はラファエロがゆっくりと頷いた。
「あくまで私の推察ですからね?そんな証拠があるのかも分からないのですしね」
少しずつ、『呪い』の真相に近づいている気がするが、その謎を解き明かすと、また誰かが不幸になるのではないかと、クラリーチェは不安にもなる。
「ブラマーニ公爵達が、トゥーリ伯爵の行動について、何処まで把握していたのかはわかりませんが………もしかすると次は、ジャクウィント侯爵邸が狙われるのではないかと思うのです」
「…………!」
クラリーチェは軽く息を呑んだ。
トゥーリ伯爵邸で過ごしていた間はもちろんのこと、襲爵してからも生家であるジャクウィント侯爵邸を訪れる機会は一度としてなかった。
エドアルドの話ではトゥーリ伯爵が手入れをしていたようだとしか聞いていないその屋敷での記憶がないクラリーチェ自身は思い出も何もない。
それでも、先祖が代々大切にしてきた、そして両親か幸せな日々を過ごした屋敷を無法者に荒らされるのはいたたまれない気持ちになった。
「あの屋敷の所有者は、クラリーチェ嬢………貴女です。故に、この鍵は貴女が持っているべきでしょう」
真鍮製のずっしりとした鍵が、クラリーチェの掌に落とされた。
「トゥーリ伯爵の手記の中から、出てきたものです。大切そうに、ビロードの布で包んでありましたよ」
クラリーチェはじっと、綺麗に磨き上げられた鍵を見つめた。
そして、今この鍵を渡された意味を考える。
「………殿下は両親の事故の真相が、ジャクウィント侯爵邸にあると、確信をお持ちなのですね?」
クラリーチェが静かな声で尋ねると、ラファエロは満足そうに頷いた。
「トゥーリ伯爵も探し出せなかった真実に、貴女なら辿り着けると信じています。………では、私はこれで失礼いたしますね」
そう言い残すと、ラファエロは立ち去っていった。
残されたクラリーチェは鍵を握りしめたのだった。
今度はラファエロがゆっくりと頷いた。
「あくまで私の推察ですからね?そんな証拠があるのかも分からないのですしね」
少しずつ、『呪い』の真相に近づいている気がするが、その謎を解き明かすと、また誰かが不幸になるのではないかと、クラリーチェは不安にもなる。
「ブラマーニ公爵達が、トゥーリ伯爵の行動について、何処まで把握していたのかはわかりませんが………もしかすると次は、ジャクウィント侯爵邸が狙われるのではないかと思うのです」
「…………!」
クラリーチェは軽く息を呑んだ。
トゥーリ伯爵邸で過ごしていた間はもちろんのこと、襲爵してからも生家であるジャクウィント侯爵邸を訪れる機会は一度としてなかった。
エドアルドの話ではトゥーリ伯爵が手入れをしていたようだとしか聞いていないその屋敷での記憶がないクラリーチェ自身は思い出も何もない。
それでも、先祖が代々大切にしてきた、そして両親か幸せな日々を過ごした屋敷を無法者に荒らされるのはいたたまれない気持ちになった。
「あの屋敷の所有者は、クラリーチェ嬢………貴女です。故に、この鍵は貴女が持っているべきでしょう」
真鍮製のずっしりとした鍵が、クラリーチェの掌に落とされた。
「トゥーリ伯爵の手記の中から、出てきたものです。大切そうに、ビロードの布で包んでありましたよ」
クラリーチェはじっと、綺麗に磨き上げられた鍵を見つめた。
そして、今この鍵を渡された意味を考える。
「………殿下は両親の事故の真相が、ジャクウィント侯爵邸にあると、確信をお持ちなのですね?」
クラリーチェが静かな声で尋ねると、ラファエロは満足そうに頷いた。
「トゥーリ伯爵も探し出せなかった真実に、貴女なら辿り着けると信じています。………では、私はこれで失礼いたしますね」
そう言い残すと、ラファエロは立ち去っていった。
残されたクラリーチェは鍵を握りしめたのだった。
48
お気に入りに追加
7,154
あなたにおすすめの小説
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
殿下、側妃とお幸せに! 正妃をやめたら溺愛されました
まるねこ
恋愛
旧題:お飾り妃になってしまいました
第15回アルファポリス恋愛大賞で奨励賞を頂きました⭐︎読者の皆様お読み頂きありがとうございます!
結婚式1月前に突然告白される。相手は男爵令嬢ですか、婚約破棄ですね。分かりました。えっ?違うの?嫌です。お飾り妃なんてなりたくありません。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。