冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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本編

106.鍵

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「証拠………とは、私の両親が………ジャクウィント家が呪われているという噂の、真実を知るためのものですか………?」

今度はラファエロがゆっくりと頷いた。

「あくまで私の推察ですからね?そんな証拠があるのかも分からないのですしね」

少しずつ、『呪い』の真相に近づいている気がするが、その謎を解き明かすと、また誰かが不幸になるのではないかと、クラリーチェは不安にもなる。

「ブラマーニ公爵達が、トゥーリ伯爵の行動について、何処まで把握していたのかはわかりませんが………もしかすると次は、ジャクウィント侯爵邸が狙われるのではないかと思うのです」
「…………!」

クラリーチェは軽く息を呑んだ。
トゥーリ伯爵邸で過ごしていた間はもちろんのこと、襲爵してからも生家であるジャクウィント侯爵邸を訪れる機会は一度としてなかった。
エドアルドの話ではトゥーリ伯爵が手入れをしていたようだとしか聞いていないその屋敷での記憶がないクラリーチェ自身は思い出も何もない。
それでも、先祖が代々大切にしてきた、そして両親か幸せな日々を過ごした屋敷を無法者に荒らされるのはいたたまれない気持ちになった。

「あの屋敷の所有者は、クラリーチェ嬢………貴女です。故に、は貴女が持っているべきでしょう」

真鍮製のずっしりとした鍵が、クラリーチェの掌に落とされた。

「トゥーリ伯爵の手記の中から、出てきたものです。大切そうに、ビロードの布で包んでありましたよ」

クラリーチェはじっと、綺麗に磨き上げられた鍵を見つめた。
そして、今この鍵を渡された意味を考える。

「………殿下は両親の事故の真相が、ジャクウィント侯爵邸にあると、確信をお持ちなのですね?」

クラリーチェが静かな声で尋ねると、ラファエロは満足そうに頷いた。

「トゥーリ伯爵も探し出せなかった真実に、貴女なら辿り着けると信じています。………では、私はこれで失礼いたしますね」

そう言い残すと、ラファエロは立ち去っていった。
残されたクラリーチェは鍵を握りしめたのだった。
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