冷遇側妃の幸せな結婚

玉響

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本編

105.賊

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リリアーナに比べると、自分の言動は適切でなかったとクラリーチェは少し反省した。
まだまだ、貴族として学ぶべきことは多い。

カンチェラーラ侯爵夫人から沢山の事を学んだが、彼女は駆け引きにのようなことはあまり得意ではない。そして、クラリーチェ自身もそうだった。
リディアがリリアーナとの交友関係を勧めてきたのは、そういった点を彼女から学べるようになのだとクラリーチェは理解した。

「………少し迂闊でした。申し訳ございません、殿下」

暫しの沈黙の後、ラファエロが厳しい表情を浮かべた。

「………いえ、グロッシ侯爵令嬢なら問題無いでしょう。………それよりもクラリーチェ嬢にお伝えしておくことがあって参りました。………トゥーリ伯爵邸に賊が入ったと報告がありました」
「賊………?」
「まだ犯人は捕まっておりませんが、おそらくブラマーニ公爵達の手の者かと。………薄々、トゥーリ伯爵が反旗を翻すことが分かっていたのでしょうね。屋敷に残されている金目のものには一切手を付けず、書斎や執務室がかなり荒らされているそうです」
「………つまり、伯父の集めた証拠の品が目当てだったということですわね?」

クラリーチェの言葉に、ラファエロが頷く。

キエザは、周辺国に比べても治安は良い方だ。騎士団を組織化し、その下に各都市毎の自警騎士団を配置しているために、犯罪へと取締ができているからだ。
王都で、しかも貴族の屋敷に賊が入るなど、前代未聞だった。

「今、兄上が自警騎士団に、王都全体を捜索させていますが、おそらく犯人は捕まらないでしょう」

少し悔しそうに、ラファエロは唇を噛んだ。

「証拠が既にエドアルド様に渡ったと、推察される可能性もあるのではないですか?」

ブラマーニ公爵達の最終的な狙いは何か分からないが、サヴィーニ侯爵の例を見れば、目的の為には手段は選ばないということ、そして計画の邪魔になるようなものは一切排除しようとすることが伺える。

「それも考えておかなければなりませんが、兄上はブラマーニ公爵の手の者に殺られるようなことは無いでしょう。我々兄弟は、幼少の頃から常に命を狙われてきましたからね」

なんてことはない、と言うように、ラファエロは変わらぬ穏やかな笑みを浮かべると、さらっと恐ろしいことを口にした。

「………トゥーリ伯爵は生前、管理を任されていたジャクウィント侯爵邸に頻繁に通っていたということはご存知ですね?」

クラリーチェは、ラファエロの言葉に頷いた。

「これは私の推測ですが………トゥーリ伯爵はジャクウィント侯爵邸で、ブラマーニ公爵達を貶めるための重大な証拠を探していたのではないかと思っているのです」

ラファエロの言葉に、クラリーチェは大きく目を見開いた。
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