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本編
閑話 兄弟の攻防?(SIDE:ラファエロ)※読まなくても本編に影響ありません
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物凄い勢いで告白の仕方についてエドアルドが、ラファエロに尋ねてきた数日後。
何とかクラリーチェに手紙を届けたという事実を、ラファエロは直接、エドアルドから聞いた。
報告を貰う必要性はあまり感じていなかったが、ラファエロはすぐにその裏に隠されたエドアルドの意図を感じ取る。
「それで………?今度は何ですか?私に、何をしろと仰るのです?」
矢継ぎ早に質問すると、エドアルドは困ったように視線を彷徨わせた。
「その……クラリーチェに伝える言葉は、自分で何とかする。だが………他に何かアドバイスを貰えないだろうか?」
ここ最近で、完璧な存在であるはずの兄の、情けない姿を見慣れつつあるが、それでもラファエロは溜息をつかずにはいられなかった。
「………何の為にあの本を貸したと思っているんですか。ただの暇つぶしに貸したのではないのですよ?」
「う………」
げんなりしたラファエロが冷たい視線を向けると、エドアルドは困ったように口籠る。
何故、エドアルドが恋愛に関してだけここまでどうしょうもないのか………。ラファエロは甚だ疑問だった。
その分野の能力を全て犠牲にして生まれて来てしまったとしか思えなかった。
「そうですねぇ………自分自身を、曝け出す覚悟が出来ているのであれば、ありのまま………自然体の自分を見てもらうのがいいんじゃないですか?」
「私はいつも自然体だ」
すかさずそう答えるエドアルドに、ラファエロは嘆息する。
「それは、『国王エドアルド』としての自然体でしょう。………ご自身で言っていたではありませんか。『エドアルド個人としての私を見てほしい』と。………彼女に出会った時、彼女は兄上が王太子であることを知らなかった。その時の事を思い出してみてください」
エドアルドに圧倒的に足りないのは、最後の一歩を踏み出す勇気と想像力だ。
その二つが足りない故に、ラファエロを頼ろうとする。
だから敢えて、最後のアドバイスは曖昧な表現をしてみる。
最後の最後まで、面倒を見るのは簡単だ。
だが、それでは本当の意味でエドアルドがクラリーチェの心を掴んだことにはならないとラファエロは思った。
エドアルドの為に、最後の最後でラファエロはエドアルドを突き放した。
エドアルドは少しの間、ラファエロを見つめていたが、納得したように頷いた。
「……分かった。ラファエロ、ありがとう」
エドアルドが、笑った。
その自信を取り戻した表情に、ラファエロは心から安堵を覚えたのだった。
何とかクラリーチェに手紙を届けたという事実を、ラファエロは直接、エドアルドから聞いた。
報告を貰う必要性はあまり感じていなかったが、ラファエロはすぐにその裏に隠されたエドアルドの意図を感じ取る。
「それで………?今度は何ですか?私に、何をしろと仰るのです?」
矢継ぎ早に質問すると、エドアルドは困ったように視線を彷徨わせた。
「その……クラリーチェに伝える言葉は、自分で何とかする。だが………他に何かアドバイスを貰えないだろうか?」
ここ最近で、完璧な存在であるはずの兄の、情けない姿を見慣れつつあるが、それでもラファエロは溜息をつかずにはいられなかった。
「………何の為にあの本を貸したと思っているんですか。ただの暇つぶしに貸したのではないのですよ?」
「う………」
げんなりしたラファエロが冷たい視線を向けると、エドアルドは困ったように口籠る。
何故、エドアルドが恋愛に関してだけここまでどうしょうもないのか………。ラファエロは甚だ疑問だった。
その分野の能力を全て犠牲にして生まれて来てしまったとしか思えなかった。
「そうですねぇ………自分自身を、曝け出す覚悟が出来ているのであれば、ありのまま………自然体の自分を見てもらうのがいいんじゃないですか?」
「私はいつも自然体だ」
すかさずそう答えるエドアルドに、ラファエロは嘆息する。
「それは、『国王エドアルド』としての自然体でしょう。………ご自身で言っていたではありませんか。『エドアルド個人としての私を見てほしい』と。………彼女に出会った時、彼女は兄上が王太子であることを知らなかった。その時の事を思い出してみてください」
エドアルドに圧倒的に足りないのは、最後の一歩を踏み出す勇気と想像力だ。
その二つが足りない故に、ラファエロを頼ろうとする。
だから敢えて、最後のアドバイスは曖昧な表現をしてみる。
最後の最後まで、面倒を見るのは簡単だ。
だが、それでは本当の意味でエドアルドがクラリーチェの心を掴んだことにはならないとラファエロは思った。
エドアルドの為に、最後の最後でラファエロはエドアルドを突き放した。
エドアルドは少しの間、ラファエロを見つめていたが、納得したように頷いた。
「……分かった。ラファエロ、ありがとう」
エドアルドが、笑った。
その自信を取り戻した表情に、ラファエロは心から安堵を覚えたのだった。
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